本研究では、令和3年度・4年度に引き続き、令和5年度も【1】高齢者のオンラインのつながり・支え合い醸成のための地域介入手法の開発と介入を実施した。具体的には、地域社会参加型研究法(Community-Based Participatory Research: CBPR)の手法を用い、公民館、まちなか交流スペース管理者らと協働し、スマートフォン・タブレット教室を計12回実施、のべ131名の高齢者に参加いただいた。また、オリジナル交流ツール、町民体操オンライン集会などを企画・実施し、のべ149名の参加者を得、高齢者同士のオンライン交流の機会を創出した。CPRは、「地域の人々が抱えている問題を解決するための介入に、生活者・住民が参加して、専門家と協力しながら行う取り組み」、つまり研究者が地域の中に入ってコミュニティメンバーとともに解決方法を検討し実行するアクションリサーチである。CBPRは世界的に重要視されてきている。 また、【2】オンラインのつながり・支え合いと健康アウトカムについてのコホート調査(令和3~5年度)について、これまでに実施したベースライン調査につづき、追跡調査を実施、【1】のオンライン交流に関わった高齢者は、関わらなかった高齢者に比して、ソーシャル・キャピタルの指標が2.65倍、主観的健康感が1.46倍優れていることが明らかとなった。現在全国との比較を含めた更なる解析を進めている状況である。 そして、【3】地域介入の本質を確認する探索的調査(インタビュー調査)(令和5年度)についても実施し、【1】で実施し明らかとなったオンライン交流ツールが、「気心の知れた仲間との時間に感じる安心」、「いつでもつながっている安心」、「自身のツール対応能力の向上に感じる安心」を介してソーシャル・キャピタルおよび主観的健康感を高齢者に与えていることと結論づけた。
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