研究課題/領域番号 |
21K10495
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茅野 大志 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (10895535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 感染症疫学 / 新型コロナウイルス感染症 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新型コロナウイルス(COVID-19)の2次感染に関する異質性を明らかにし、流行制御の最適解を探求することである。2023年度は、人口レベルの免疫保持者割合を考慮した予防接種効果の時系列インパクトに関する研究を実施した。他にも、COVID-19のクラスター(集団感染)が流行の規模や異なる時期でどのように変化し、異なる種別のクラスターが相互にどのように影響し合ったかを、因果推論の手法を用いて明らかにした。以下、個々の研究成果を概説する。 (1)COVID-19の残存負荷に関する研究:主に予防接種によって付与された人口レベルの免疫割合(Immune landscape)に焦点を当て研究を行った。市中での感染と予防接種による免疫により、人口レベルの免疫状態は非常に複雑になっている。そのため、人口レベルの免疫保持者割合を捉えた上で、ある時点で人口全体が感染した場合の被害の規模(感染者数および死亡者数)をCOVID-19の「残存負荷」と定義して、その定量化を試みた。予防接種が人口中に行き渡る中で、より厳しい対策が解除されつつあった2022年に着目し、より少ない被害をもたらす効果的な出口戦略を探索した。 (2)異なるクラスターデータを用いた因果探索:ベイズ推定を用いて、クラスター発生に関連する因果ネットワークの量的評価を試みた。その結果、流行の上流に位置するクラスターを効果的に対策することが流行制御に貢献する可能性が示された。
なお、2022年度初めに投稿中であった予防接種の人口レベルの効果に関する論文は科学雑誌に掲載された。(1)、(2)に関しては現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗は予定通りであり、ワクチンの人口レベルの予防効果やクラスターなどに注目しながらCOVID-19の2次感染に関連する異質性を明らかにするとともに、流行制御における重要な要因を特定することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2024年度も、COVID-19の2次感染に関する異質性に注目した研究を継続し、特にリアルタイムで当時実施していた感染者数・入院患者数の予測研究をまとめる。感染者数が日々変化する流行期において、リアルタイムでの感染者数の予測や短期予測は政策決定において非常に重要な役割を果たす。感染者数の上昇期において介入実施タイミングについても評価可能となる。最終年度は、さらなる追加研究も実施し、4年間のプロジェクトの集大成となるような研究成果に結び付けたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した投稿に係る料金を別の研究費で補てんしたことが理由と考えられる。
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