研究課題/領域番号 |
21K10509
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
櫻井 勝 金沢医科大学, 医学部, 教授 (90397216)
|
研究分担者 |
石崎 昌夫 金沢医科大学, 医学部, 教授 (10184516)
森河 裕子 金沢医科大学, 看護学部, 教授 (20210156)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 予防医学 |
研究実績の概要 |
本研究は,現行の特定健診・特定保健指導では把握できない40歳未満の青壮年期を含む職域集団を対象に,体質,食事や運動などの生活習慣,職業要因などの社会的要因などと肥満・生活習慣病との関連を明らかにし.青壮年期における肥満・生活習慣病予防のための効果的な介入方法を開発し,その効果を検証する. 2022年度は,研究対象者に生活習慣病や循環器疾患発症に関する調査を行った.また,既存のコホート研究の資料を用いて,生活習慣および職業性要因と肥満発症との関連を検討した.対象企業に2004年に在籍していた非肥満の従業員5744名(40歳未満 男性1657名,女性842名,40歳以上 男性2137名,女性1196名)を2016年まで追跡し肥満の発症を確認した。肥満の発症率(対千人年)は,男性では40歳未満 56.4,40歳以上 68.6と年齢間に差はなく,女性では40歳未満 23.2,40歳以上 45.8と女性では40歳以上で有意に高かった(年齢調整ハザード比 1.66(95%信頼区間 1.39-1.99)).また,生活習慣では男女とも40歳以上で適量飲酒者の肥満発症リスクは有意に低く,職業要因では40歳未満女性でブルーカラー,交代勤務従事者,40歳以上男性で月60時間以上の残業,また男性全体及び40歳未満女性で6時間未満の睡眠,また男性全体で睡眠の質の低下が肥満症発症リスクと関連していた.一方,健診受診者全員に対して1年後の3kg以上の体重増加と関連する要因を検討したところ,40歳未満男性では,肥満あり,睡眠時間,睡眠の質が,40歳以上男性では,残業時間,睡眠時間,睡眠の質が,40歳未満女性では肥満あり,職種(ブルーカラー),交代勤務が,40歳以上女性では運動習慣なしが,有意な関連を認めた. 以上より,年齢や性別により異なる肥満リスクを考慮した肥満予防対策が重要であることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の対象企業から,過去5年分の健康診断情報(健診結果や生活習慣に関する問診)を入手し,その分析を行う予定であるが,個人情報保護法の改定など伴い,企業内での健診結果など要配慮個人情報の取り扱いが見直されてきた.このため,これらの資料を入手するにあたり,対象企業と調整に時間がかかっており,2022年度には入手できなかった.そこで2022年度は2021年度に引き続き,既存のコホート研究の資料を用いた解析を行い,2023年度に新たに入手する資料を基に分析をすすめることとした.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は,これまで行ってきた既存コホートの資料の解析結果をまとめるとともに,新たに生活習慣に関する情報を入手し,食習慣や運動習慣などのより詳細な生活習慣と肥満・生活習慣病発症との関連を解析することで,青壮年期に特徴的な生活習慣の課題を明らかにする.得られた結果をもとに,生活習慣のリスク要因に基づく保健指導法を開発し,2024年度に開発ツールに基づく保健指導を実施し効果を検証する. 当初は開発した保健指導法の効果検証を2023年度に行う予定であったが,進捗の遅れから2024年度に実施することとした.進捗は遅れてはいるが,保健指導は5-6月に実施し,3か月から半年後の効果を確認するため,本研究期間内の2024年度には結果をまとめることが可能である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度には新たな資料の入手ができなかったことから,資料整理にかかる費用は予定よりも少なく,また新たなデータベース構築に係る委託費用等も使わなかった.これらの作業は2023年度に実施する予定であり,その経費を2023年度に繰り越して使用する.
|