法医実務におけるDNA型鑑定ではキャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis;CE)法を用いたShort Tandem Repeat(STR)検査が最も一般的な手法として普及している。しかし、STRの反復数の情報しか利用できていないため、DNA型鑑定の精度向上を図るには改善の余地が残されている。本研究では広く普及したCE装置を利用しつつ、STRに隣接する日本人に多くみられる一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism;SNP)とSTRの同時解析法を構築し、DNA型鑑定の精度向上を図ることを目的として検討を行った。 日本人のDNA多型情報から9座位のSTR(D13S317、D16S539、D1S1656、D2S441、D3S4529、D5S2800、D5S818、D7S820及びvWA)とそれらに隣接するSNPを標的とし、SNPの野生型及び変異型をそれぞれ識別する蛍光標識プライマーを設計し、既知試料を用いてPCR増幅を行った後、CE法により各座位で正確に型判定できるか確認した。 D3S4529を除く8座位については、正確な型判定が可能であったが、一部スタターと呼ばれる副産物が検出されることから、今後は解析ソフト上でスタター排除の閾値を設定するための検討が必要であった。また、D3S4529については複数のプライマーを設計して検討したが、変異型のアレルを検出することが困難であり、引き続きプライマーの再設計あるいはPCR条件の再検討が必要であると考えられた。 結果として本研究により8座位のSNPとSTRを標的とする反応系を構築することができ、同手法によってDNA型鑑定の向上を図ることが可能であることが示唆された。
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