研究課題/領域番号 |
21K10516
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
猪口 剛 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (20572580)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 死後血管造影 / 死後画像 / 冠状動脈血管造影 / サブトラクション法 |
研究実績の概要 |
サブトラクション法の適切な撮影条件を決定するため、以下のファントムを用いた予備的実験を実施した。インジェクターチューブを模擬血管として見立て、模擬石灰化病変として油性粘土を使用し、生理食塩水注入後と造影剤注入後の画像を取得。FOV120・軟部組織関数、FOV120・骨関数、FOV100・軟部組織関数、FOV100・骨関数の4条件で再構成画像を作成。それぞれの条件において、サブトラクションを実施し、石灰化部と非石灰化部の内腔直径を比較した。結果、空間分解能が高い画像を作成することのできる、FOVを絞り、骨関数を使用して再構成した画像をデータセットとした条件(FOV100・骨関数)では、内腔直径に差はなく、より良好な画像が得られると考えられた。続いて、実検体において狭いFOVと骨関数を使用して再構成した画像データセットでサブトラクションを実施し、サブトラクション後画像と病理組織標本における面積狭窄率の比較を行った。造影前画像において、高度石灰化病変を認める部位を選択し、冠動脈を心臓より剖出後、脱灰作業を実施し、造影前画像より選択した部位と同一の部位を、分岐枝や石灰化部を目印に切り出し病理標本を作製した。9事例、43か所を対象とした。血管断面面積と内腔面積を、サブトラクション画像においては画像解析ソフトを用いてCT値より測定し、病理組織標本においては、画像統合ソフトウェアを用いて直接測定し、それぞれ面積狭窄率を計算し、誤差を求めた。結果、面積狭窄率(平均±標準偏差)は、病理組織標本において79.6±11.1%、サブトラクション画像において82.7%±9.2%であり、その誤差は6.8%±5.4%であった。解剖では、通常25%間隔で狭窄度を評価していることを考慮すると、高度石灰化事例においてVINCENTを用いたサブトラクション法は有用な補助的検査に成り得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期間中、ファントムを用いた実験を追加することにより、サブトラクション法の有用性検証のための、より基礎的なデータを入手することが出来た。また、狭窄率比較のための実検体の事例数・サンプル数も比較的順調に集積することができている。
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今後の研究の推進方策 |
面積狭窄率の比較においては、対象が比較的狭窄率が高い検体に偏りがあったことから、狭窄率が軽~中程度の検体を追加する予定である。また、放射線科専門医によるサブトラ前造影画像における対象部位の狭窄度評価の可否および面積狭窄率測定における検査者内・検査者間信頼性を追加し、冠状動脈サブトラクション法の精度・有用性を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に使用した物品は、当該年度前に購入した物品を充てることが可能であったため、新たな購入を必要としなかった。また、当該年度において、サンプル数が予定していたよりも少なかったため、使用額も予定より少額であった。次年度はより多くのサンプルを収集し結果をまとめる予定であり、それらに対する病理組織学的検査等の費用、学会発表や学術誌への発表費用に助成金を充てる予定である。
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