研究課題/領域番号 |
21K10519
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
長谷川 弘太郎 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40574025)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超高感度分析 / 関節液 / 関節軟骨 / LC-MS/MS / 司法解剖 |
研究実績の概要 |
関節液・関節軟骨試料を用いた数十年前に摂取した薬毒物の超高感度検出法の開発
研究の目的:法医学分野では、関節液や関節軟骨を対象とした薬毒物分析について、これまでごく少数の膝関節液での報告のみであった。関節液は密閉した関節包内部に分泌される体液である。関節軟骨はそのターンオーバー(入れ替わり)期間が極めて長く、100年以上ともいわれている。これら関節構造での薬毒物の分布・死後再分布についての知見や体系立ったデータの蓄積は極めて乏しい。本研究の目的は、膝関節を構成する要素(関節液、軟骨など)を分析対象とした高感度分析方法を開発することである。この研究では、コンタミネーションが少なく、かつ検出可能期間がきわめて長期間(数年から数十年を期待)である法医学分野での薬毒物の分析・鑑定方法の開発が期待される。 研究方法:本研究では、薬毒物が関与した解剖事例で申請者が関節液や関節軟骨を採取し、これらを試料として対象物質の超高感度検出方法を開発することで、関節構造での薬毒物の存在や分布を明らかにする。加えて、各事例での薬毒物の摂取歴から検出可能期間の検討も行う。基礎データの採取のためには、ボランティア参加による侵襲的実験も検討する。 研究の結果:2021年度は、ベンゾジアゼピン系薬物であるトリアゾラムが関与した解剖事例で、左右膝関節液、血液、髄液、心嚢液、胃内容物及び胆汁を採取した。これらを 試料として、各試料中のトリアゾラム及び代謝物であるヒドロキシトリアゾラムの濃度を測定し、これらの結果をまとめて学術雑誌Forensic Toxicologyに投稿し、掲載された。本年度では、基礎データの採取を目的として中国の内蒙古医科大学との共同研究を進めた。ヒト関節液中の薬物及び代謝物濃度を測定するための研究計画策定と倫理委員会での審査を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、司法解剖での事例について研究を行い、学術雑誌Forensic Toxicologyへの論文投稿を行った。2022年度については、基礎データの採取を図るべく、中国の内蒙古医科大学との共同研究を企画した。現在、浜松医科大学と内蒙古医科大学での研究計画の策定及び各倫理委員会での審査を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで、適切な試料採取手技の検討や分析方法、データの評価方法について、おおむね当初の計画通りに研究は進行している。よって、今後もこれまでの実験計画に沿って、種々の薬毒物体内分布や濃度を超高感度分析によって明らかにして、研究目標の達成を目指す。 薬毒物の曝露・使用歴が明確な事例については、対象物質や代謝物の検出ウィンドウを明らかにしていく。必要に応じて、ヒト血中と関節液中の薬物濃度に関する基礎データの採取を検討する。引き続き、論文投稿や学会発表に必要なデータを採取し、成果発信や学術雑誌への投稿を行っていく予定である。
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