研究課題/領域番号 |
21K10538
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
阿久津 智子 科学警察研究所, 法科学第一部, 室長 (50356151)
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研究分担者 |
櫻田 宏一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10334228)
横田 勲 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (20761414)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | mRNA / マルチプレックスRT-PCR法 / 網羅的 / 鼻汁 / 月経血 |
研究実績の概要 |
月経血には、血液に加えて子宮内膜からの漏出液や剥離した組織片が含まれるため、データベースや文献検索により、子宮内膜に特徴的に発現する遺伝子を十数種選定し、月経血識別のためのマーカー候補とした。それらの月経血における検出性および他の体液への交差性を確認した結果、4遺伝子について、月経血での特異性が確認された。そこで、これらを月経血マーカーとし、フラグメント解析での検出のためのプライマーを設計し、月経血マルチプレックスRT-PCR系を構築した。標準的な各種体液試料における各マーカーの特異性を再度確認したところ、フラグメント解析により検出感度が向上したためか、一部の月経血マーカーで他の体液との交差性が認められたため、陽性判定のためのカットオフ値の設定あるいはそれぞれのマーカーの定量的評価が必要と考えられた。 鼻汁については、鼻粘膜での発現が解析されている遺伝子が限られているため、鼻粘膜に加え、気管あるいは肺に特徴的に発現する遺伝子を二十数種類選定し、鼻汁識別のためのマーカー候補とした。それらの鼻汁における検出性を確認したところ、いずれも、すでに16-plex RT-PCR系に組み込んでいるBPIFA1やSTATHと比較して、増幅が非常に弱いか認められなかった。プライマー濃度やPCR増幅条件あるいはプライマー配列を変更しても十分には改善しなかったため、今回選定した遺伝子を鼻汁マーカーとするのは難しいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画のうち、令和3年度分の ①鼻汁および月経血mRNAマーカー候補の選定およびマルチプレックスRT-PCR系の構築 ②鼻汁および月経血マルチプレックス系の特異性の確認 を実施したため。
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今後の研究の推進方策 |
月経血マルチプレックスRT-PCR系については、一部の月経血マーカーでの他の体液との交差性を改善するため、陽性判定のためのカットオフ値の設定およびそれぞれのマーカーの定量的評価を行う。 鼻汁については、引き続きデータベースや文献検索によるマーカー候補の選定を行い、鼻汁での特異性が確認されたマーカーを用いて、鼻汁マルチプレックスRT-PCR系を構築する。 特異性が確認された鼻汁および月経血マルチプレックス系の各マーカーについて、16-plex RT-PCR系に統合し、体液網羅的マルチプレックスRT-PCR系を構築する。発現が低いなどの理由で統合が難しい場合は、別条件で増幅させたPCR産物を混合し、フラグメントアナライザによる解析に供する。 微量、斑痕、分解、混合試料等でも体液網羅的マルチプレックスRT-PCR系による体液の識別が可能か検証し、本検査法の適用範囲や限界を把握する。また、様々な由来の血液試料に対して本検査法を適用し、血痕の由来や出血部位の推定が可能か検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に、フラグメント解析用ソフトウェアの追加ライセンスおよび解析用コンピュータの費用を計上していたが、当該年度はデータベースや文献検索、月経血あるいは鼻汁における検出性および他の体液に対する交差性の確認が中心で、フラグメント解析に供したサンプル数が少なく、本体付属の解析用コンピュータおよび共有のソフトウェアでの解析が可能であったため。 令和4年度以降は、体液網羅的マルチプレックスRT-PCR系の構築および法科学的検証が中心となり、フラグメント解析に供するサンプル数が増加することから、別途解析用コンピュータおよびソフトウェアを導入する予定である。
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