研究課題/領域番号 |
21K10594
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
河野 由美 畿央大学, 健康科学部, 教授 (10320938)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アドバンス・ケア・プランニング / デス・エデュケーション / QOD(Quality of Death) / 死生観 / 看取り / エンド・オブ・ライフケア / 介入 / 看護 |
研究実績の概要 |
高齢多死社会の進展に伴い,人生の最終段階を自分らしく過ごすための一つの方法として近年,ACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生会議)が注目されている.申請者はR2年度までの科研費研究で実験的手法を用い,死に対する態度変化を生理学的指標から検証した.加えてACP啓発動画を開発し,誰もがYouTubeを通して視聴できるようにした.R3年度からの本研究では幅広い年齢層を対象にして,ACP動画の有効性を実証的に検証する.そして,QOD(死の質)を高めるためのデス・エデュケーション(DE)の効果とACPの有効性を考察し,より有用性の高いACPプログラムを開発することを本研究の目的とした. 令和3年度の研究では,YouTubeにアップしたACP動画視聴後にFormsからアンケート調査を実施し,その回答結果を分析し,結果を学会(第45回日本死の臨床研究会)で発表した.2021年5月1現在,動画閲覧回数4541回でアンケート回答件数は109件.アンケート回答者属性では看護職79人(72.5%),看護職以外の医療職7人(6.4%),医療職以外が23人(21.1%)であった.96.3%の人が「本ACP動画はわかりやすかった」,99.1%の人が「本動画はACPを推進する上で役立つ」,97.2%の人が「本動画は死について話し合うきっかけになる」と回答していた.医療職以外ではACPの認識度は高くはない.ACP推進のためには,広くACPに関する情報提供が必要である.今回,制作したACP動画は興味のある人しか視聴していないため,結果の解釈には限界があるものの,本動画がACP推進とデス・エデュケーションにおいての有用性が示された.なお,YouTubeにアップした動画の視聴回数は2022年4月時点で7千回を超え,日々視聴回数は伸びている状況にある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大により,行動制限がなされる中,大学の講義もリモートが多くなり,介入(実験)を実施することが困難な状況となった.また,当初研究協力を依頼する予定であった,在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションも,新型コロナウイルス感染症関連の対応に追われて,研究協力を行える状況ではなかった.加えて在宅療養者も,新型コロナウイルス感染への不安が強く,本研究計画である「死に関して考えること」をすすめることは憚られ,外部の人間との接触を受入れることも困難な状況であった.そうした状況により,本年度予定していた研究は予定通りにすすまなかった.
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今後の研究の推進方策 |
当初,研究計画書に記載していた介入(実験・縦断調査)研究は,新型コロナウイルス感染症の状況によっては,対面で予定していたものをリモートでの実施に変更する予定である. また,研究計画時には予想できかったが,現在,新型コロナウイルス感染症により元気であった人が突然に入院し,家族との面会も許されない中で死亡し,遺骨になって家族の元に返されることがおきており,新型コロナウイルス感染症は少なからず人々の死生観・看取りに影響を及ぼしていると推察される.そうした状況にあって,新型コロナウイルス感染症が人々の死生観や看取り意識に及ぼした影響を明らかにすることは本研究との関連からも重要であると考え,調査を追加実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,学会参加もリモートとなり,研究調査のため移動も制限され,計画通りに研究を遂行できなかったため,次年度使用額が生じた.R4年度の費用使用計画では,新型コロナウイルス感染症の収束が見込めない場合は,対面で企画していた介入調査の一部をリモートでの実施に変更し,WEB調査のための費用に充てる.
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