研究実績の概要 |
本研究は、コロナ感染症患者の看護に当たった看護師の臨床経験を通して、そのケア行動の裏づけとなった専門職的倫理性について記述することを目的にしている。 今年度は、看護師が認識した倫理的問題、問題に対する看護師が選択した行動、その判断基準、阻害要因について記述するために、「COVID-19」、「看護師」、「倫理」、「プロフェッショナリズム」をキーワーズにシステマティックレビューを実施した。 COVID-19パンデミックのもと、手術室・集中治療室・救急救命室のように、患者の生命が危険に晒されている現場では、看護師自身の身を守るための感染防護策も十分に取れない状況で献身的にケアを行う一方で、患者の最期を看取る際には無力感を感じていた。一般病棟においても、感染対策として患者の行動を制限したり、家族との面会を制限しなければならない状況におかれ、看護師として大切にしていた価値にもとづく患者中心という看護行為が、感染対策を実行するために妨げられるというジレンマがあった、また、プロフェッショナルとしての看護師の医療チームにおける役割機能に対する懐疑感、労働者としてのストレスにさらされている姿がレビューから浮かび上がった。 2023年5月、社会ではコロナ感染に対する防止策は緩和されているが、医療現場では、以前と変わらぬ感染への警戒態勢が続いている。パンデミックを経験し、災害を経験した日本の看護師は、この経験をもとに、次代にどう対応するかという教育を課題としている論文が発表されている。 現状は、国内における研究対象となった論文データについて、特にパンデミックの状況下での看護師に焦点を当てて、新たな倫理的問題の抽出を行なった。そして、国内の論文の分析を終え、Pubmed, Scopus, Psycinfo, CINHAL, and WOSなどのデータベースにより抽出されたデータの分析に移り、国際間の倫理的問題の共通性や差異について検討している。
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