研究課題/領域番号 |
21K10643
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研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
北島 泰子 東京有明医療大学, 看護学部, 准教授 (30434434)
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研究分担者 |
前田 樹海 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (80291574)
緒方 大樹 東京工業大学, 情報理工学院, 特任准教授 (80598037)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 看護理論 / 看護学史 / 聞き書き |
研究実績の概要 |
本研究は、我が国の看護教育に種々の看護理論を導入しようとした人々が直接語る言葉から看護の学問史を形成する研究である。2021年度は2022年度から予定しているインタビュー調査に先立ち、海外の主な看護理論と日本に導入された看護理論について調査を行った。調査したうち、日本に紹介されていた35の看護理論をまず取り上げ、その中で日本語訳の成書が出版されている28の理論の出版年と日本語訳の元となっている理論の海外での初版の刊行年を比較した。28の理論のうち海外での初版が刊行された年から日本語訳までに最長の年月を要したのはFlorence Nightingaleの“Notes on Nursing”であった。これは初版本が1859年に刊行されているが、日本語訳が出版されたのは1968年であり、海外の初版から109年の年月を経て日本語版が出版されたことになる。一方最短で日本語訳が出版されたのはVirginia Avenel Hendersonの“Basic Principles of Nursing Care”である。これは海外での初版が1960年であるのに対し、日本語訳が出版されたのは1961年であり、初版の刊行から1年で日本語訳が出版されたことになる。28の理論の海外での初版本の出版から日本語訳の刊行までの平均年数は11.86年である。しかし“Notes on Nursing”については100年以上という他にはない年月を経て日本語訳が出版されていることから外れ値とみなし、これを除く27の理論の平均年数では8.26年であった。海外の理論が日本に紹介され、誰もが日本語で読めるようになるには8~9年程度年月を要することがわかった。この8~9年という年月を看護ではどう捉えるべきかは今後の課題であり、2022年度より実施するインタビュー調査においても質問すべき事項であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はインタビュー調査を依頼する対象者を具体的に決定し、その約束まで取り付ける予定であったが、本研究の目的を達成するにあたり、より有益なインタビューを実施するための事前調査やインタビュー対象者の選定に時間を要しており、研究課題の進捗状況はやや遅れている。加えて、本研究の内容が対面でのインタビュー調査であり、調査対象者には高齢な方が多いことから、新型コロナウイルスの感染が収束しないことも研究が遅れている原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度から引き続いて、インタビュー調査を行うために準備を進め、準備ができ次第インタビュー調査を実施する。具体的には、まず日本に導入された看護理論の年代とその当時の日本の社会背景等を2021年度に続いて調査する。その後、当該看護理論を日本に導入した人物を特定し、約束を取り付けインタビューを実施する。インタビューでは、どのような経緯からその看護理論を日本に導入しようと考えたのか、当初、翻訳前の看護理論を日本に普及させるにはどの程度時間がかかると考えていたか、当時の日本の社会情勢や、当時の看護学が社会でどのように受け止められていたか等を直接語ってもらい記録に残す。同様に複数の看護理論でこの調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査対象者に約束を取り付けるための通信費や、事前調査の交通費などが2021年度において使用できなかった。これは研究課題の進捗が遅れているためであり、研究内容の変更ではないため、2022年度に引き続き研究を遂行する予定である。
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