研究課題/領域番号 |
21K10678
|
研究機関 | 純真学園大学 |
研究代表者 |
岩崎 優子 純真学園大学, 看護学科, 准教授 (80812502)
|
研究分担者 |
山崎 不二子 福岡女学院看護大学, 看護学部, 教授 (20326482) [辞退]
白石 裕子 令和健康科学大学, 看護学部, 教授 (50321253)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 精神看護学実習 / 看護学生 / 学び / 教材化 / 精神障害者 / 共感 |
研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度までの先行研究の分析(精神看護学実習の学び、精神看護学における使用教材)を踏まえ、2つの教材の作成に着手した。1つ目は精神科医療における治療空間である保護室を360度カメラで撮影し、保護室入室疑似体験ができるVR教材である。現在業者が編集作業を行っている。2つ目は、模擬患者を用いて幻聴出現場面を再現し第3者目線と当事者目線で撮影したもので、バーチャルハルシネーション(以下VH)教材である。 2つ目のVH教材は、実際に臨地実習が中止となり、学内実習を行わざる得ない状況となったため、2024年2月に学内精神実習の教材として使用した。通常、臨地実習で毎日精神障害者とふれ合いを通じて、先入観や偏見を持ちながらも精神障害者の言動の意味を共感的に理解していくが、学内実習にはその対象である精神障害者が存在しない。そのため、これまでの文献検索や精神看護学実習における学びを明らかにした結果をもとに、共感性を高める効果が期待できるVH体験、ロールプレイ、模擬患者を用いたシミュレーション演習による看護実践を盛り込んだ内容とした。VHはヤンセンファーマ社(藤田医科大学医学部精神神経科学講座:教授、岩田仲生先生:監修。このVHは先行研究上最も使用されているものであった)がインターネット上で公開しているVHの1つと、上記の自作のVH教材の2つのVHを使用した。学内実習開始直後、VH体験後、学内実習終了時の3時点において共感尺度を使用して、学生の共感を測定した。所属機関の研究倫理委員会の承認を得て、学内実習を体験した学生7名から研究協力も得たので、現在共感の変化と共感に関する学びについて分析を行っている。学内実習開始直後と学内実習終了時には共感が有意に高まっていたが、VH体験のみでは共感に影響をおよぼさないことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保護室を撮影したVR教材の作成は、実際に使用されている保護室を撮影したため、保護室が使用されていない時の撮影となった。そのため撮影予定が組めず2024年3月にようやく撮影することができた。この撮影の遅れが納期に影響をおよぼしため、2023年度中にこの教材を使用して教材の効果を検証するに至らなかった。 また、1年間を通し領域の教員が1名欠員であったこと、COVID-19は2023年5月に5類感染症に移行したが、精神科医療では慎重な対応が続いており、実習の受け入れ状況が不安定であり開始数日前に全面中止となったり、実習途中で残りの実習は中止となるなど急な対応を要する状況があり、エフォートの確保が難しかった。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、業者が編集中の保護室のVR教材を用いて、保護室入室疑似体験の学習会を行い、その学びを質的に分析する予定である。また精神実習を臨地で行い実際の保護室見学を行った学生から研究同意を得ており、実際の保護室見学の学びと上記の保護室入室疑似体験の学びを比較し、作成した保護室のVR教材の効果を検証する予定である。 また上記の学内実習の研究結果からVH体験のみでは看護学生の共感を高めるという結果には至らなかったこと、VHは実施に際し被験者の心的負担を考慮する必要があること、現在インターネットで公開されているVHは当事者目線の映像作成であり、精神症状出現時の対象者の状況を客観的視点で捉えることが出来ないことなどの結果を踏まえ、2024年度は精神症状出現場面の映像教材を作成する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が遅れているため、成果発表としての学会参加および旅費の支出がなかった。2024年度は学内実習における研究成果を学会発表予定であり、また精神看護学における教材や教育方法についての最新の情報を収集するため日本精神保健看護学会への参加も予定している。 保護室の撮影は入室している患者がいる場合は実施できないため、撮影可能となったのが3月中旬になったことで納品が送れたためである。
|