研究課題/領域番号 |
21K10689
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
中村 博文 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (90325910)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Resilience / 統合失調症 / 家族 |
研究実績の概要 |
地域で生活する統合失調症患者の家族に対してのresilience概念を明らかにするために,統合失調症患者のサポート体制を明らかにする必要があると考え,地域で生活する統合失調症患者を支えるものを明確にし,患者がより良く生活するための看護実践を検討することを本研究の目的とした。 研究方法として首都圏で生活する統合失調症患者240名を対象とし,2021年4月~2022年3月に質問紙調査を実施した。調査内容として,「統合失調症を抱えながらも,あなたを支えるものは何か」を質問した。記載内容はコード化し,カテゴリーとして抽出し,質的帰納的に分析した。複数の研究者で検討し真実性と妥当性の確保に努めた。本研究は茨城県立医療大学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号935)。 結果は,有効回答数は,108名(45.0%)であった。131の記載内容をコード化し,18サブカテゴリー,6カテゴリーが抽出された。地域で生活する統合失調症患者を支える要因は,家族や友人との関わりの“さまざまな人の関わり”,趣味や信仰などの“自身の支えとなるもの”,同じ病気の人との会話などの“支持的なコミュニケーション”,自分を認めてもらえたなどの“自己肯定と他者からの評価”,自分の夢と居場所などの“自身の夢を語れる場所”,医療従事者からの評価などからなる“医療従事者からの評価と病気の回復”が抽出された。 考察として,統合失調症患者の当事者を支えるものとして,先行研究では価値観や環境資源が抽出されていたが,本研究でも“自身の支えとなるもの”のように自身の趣味,信仰,仕事などの自分の価値観,人生観となる要因や,“自己肯定と他者からの評価”のように自分自身をポジティブに捉えるような働きかけが重要であることが分かった。それらを高めるような看護支援が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
統合失調症患者の家族に対して,質問紙調査を行う予定であったが,調査を依頼する家族会等の運営が,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により対面での会合が中止になることが 多かったため,実際の質問紙調査を行うことができなったことが要因である。また,家族の方が高齢であることが多く,感染対策的な準備も必要であり,研究進捗が遅れている理由のひとつとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後1年間で,以下の研究を行いたい。 研究1 研究目的:統合失調症患者家族が日常生活の中で抱えている,問題点や支えになっている事項などを調査し,統合失調症患者の家族レジリエンス尺度開発のための,予備的調査を行い,統合失調症患者家族レジリエンスの実態を把握する。研究対象:首都圏の統合失調症患者家族約100名に対して,質問紙調査を行う。調査内容・方法:調査内容として,一般的なレジリエンス尺度,患者の精神症状,家族の生きがい,日常の生活で困っていること・楽しいと感じることなど,人口統計学的因子;患者・家族(年齢,性別,家族構成,婚姻状況,教育年数,住居形態など)を調査する。 研究2 研究目的:統合失調症患者の家族レジリエンス尺度の開発を行い,信頼性・妥当性を検証し,調査に耐えうる尺度を作成する。研究対象:首都圏の統合失調症患者家族約300名に対して,質問紙調査を行う。調査内容・方法:統合失調症患者家族レジリエンス尺度,一般的なレジリエンス尺度,WHOQOL26(QOL尺度),自己効力感,自尊感情,健康統制感,情緒支援ネットワーク,日常苛立ちごと,患者の病気のこと(病名,発症年齢,入院の回数,精神症状,内服薬による副作用など),人口統計学的因子;家族及び患者(年齢,性別,家族構成,婚姻状況,教育年数,住居形態など)を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の家族に対する調査が,新型コロナウイルス感染拡大のため実施できなかったので,設備備品費,旅費等を使用しなかったところによる。 今年度は,徐々に家族会等開催されているので,適切な予算執行を行っていく。
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