欧米において虚血性心疾患は中高年女性の死因の第一位を占めており、わが国においても人口の高齢化とライフスタイルの欧米化により、虚血性心疾患をもつ女性が増加傾向にある。虚血性心疾患は、生涯に渡って生活の自己管理が必要であり、再発へのストレスや不安からQOLが低下しやすいと言われている。しかし、わが国において、女性は男性と比較して虚血性心疾患の発症が少ないため、女性患者に焦点を絞った看護研究は未だ少なく、虚血性心疾患女性患者の実態は明らかでない。日本人は欧米人と様々な点で異なるため、欧米のエビデンスをそのまま適応するのではなく、日本人独自の科学的根拠が必要である。よって、本研究では、女性の身体・心理・社会的特性に着目しながら、虚血性心疾患における日本型の循環器看護モデルを構築し、性差を考慮した女性患者への支援のあり方について検討した。 最終年度である2023年度は、虚血性心疾患女性患者を対象とした支援プログラムとして教育用パンフレットを作成し、その有用性を検証した。パンフレットに関しては、教育教材として臨床実践に適用できるように調査施設の医師や看護師と内容および妥当性について検討を行った。また、実際に循環器内科外来に通院する虚血性心疾患女性患者31名を対象とした質問紙調査を実施した。その結果、10項目5段階評価にて、見やすさ4.16±0.90、文字の大きさ3.67±1.04、情報量3.87±0.99、病気やリスクファクターへの理解4.07±0.65、女性特有の症状への理解4.07±0.69、治療法への理解4.07±0.68、日常生活への理解4.07±0.68、活用度4.03±0.66、使いやすさ4.07±0.85であった。全体的に平均値は高く、内容や見やすさ、使いやすさは評価された。一方で、文字の大きさや情報量には改善点のあることが分かった。
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