本研究においてドセタキセル療法を受けた乳がん患者の下肢浮腫の実態を初めて明らかになった。対象者43名中下肢浮腫は13名(30.2%)に観察された。下肢浮腫の出現時期はドセタキセル投与4回目に最も多く6名(46.2%)であった。下肢浮腫の出現期間は数週間と1カ月がそれぞれ4名(30.8%)で多かった。下肢浮腫の出現部位は足背と下腿前面がそれぞれ12名(92.3%)で多かった。ケア内容はリンパドレナージ、薬物療法であった。教育を受けたのは5名(38.5%)であった。ロジスティック回帰分析の結果、下肢浮腫の出現と乳がんのステージⅣとの間に関連がみられた。 対象者5名中乳がんの病期がステージⅣの2名、ステージⅡの1名に下肢浮腫が出現した。浮腫が出現した3名全員に、真皮下端の凹凸と、皮下組織との境界不明瞭化が超音波画像で腓骨頭下15cmに観察された。この超音波画像所見は自覚症状およびその他の皮膚変化が出現する前に観察された。またステージⅡの患者では下肢浮腫がGrade 2であったのに対し、ステージⅣの患者では2名ともGrade 3まで重症化していた。 本研究により、約30%の患者に下肢浮腫が出現しており、その要因は、ステージⅣの乳がんであることが明らかになった。さらに、ドセタキセルによる下肢浮腫が重症化したのはステージⅣの特徴であった。ステージⅣの患者には、超音波診断装置を用いて腓骨頭下15cmを観察し、真皮下端の凹凸と、皮下組織との境界不明瞭化が観察された時点で圧迫療法を開始することで下肢浮腫の重症化が予防できる可能性が示唆された。
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