研究実績の概要 |
我が国では全がん罹患のうち65歳以上の前期高齢者が73.7%を占め73.4万人に上る。高齢がん患者は、負担が大きく機能障害や認知障害をもたらす治療を望まず、日常生活や機能の維持を重視している。一方、治療の判断を主治医に委ねがちで、自身の治療に対する価値や希望の表出が少ないという課題がある。高齢がん患者と医療者との協働意思決定を推進するためには、高齢がん患者の価値観や希望の表出を支援する解決方法の開発が期待されるが、我が国では高齢がん患者の診療時のコミュニケーション特徴すら十分明らかでない。 高齢がん患者のニーズに即した協働意思決定を促進するとともに、身体・心理社会的な個別性の高い高齢がん患者の中でも、特に支援を必要とする対象特性を明らかにするため、本研究の目的は、がん診療における高齢がん患者の医療者とのコミュニケーションの特徴と、関連要因を反映した協働意思決定モデルを検証し、効果的な支援方法を開発するための基礎的な知見を得ることである。初年度は関連研究のレビューと研究計画書の作成を行った。 治療の意思決定は年齢によって異なる特徴を有することが知られ、例えば意思決定への積極的な参加には高い教育レベル、年齢の低さ、女性が寄与していた(Gaston & Mitchell, 2005)。医師はコミュニケーションが多い患者に対し、より多くの情報を提供しており(Cegala et al., 2007)、若年層と比較して受動的な役割を好みがち(Singh et al., 2010)な高齢者に対する支援は十分とは言えないことが示された。
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