研究課題/領域番号 |
21K10846
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研究機関 | 兵庫県立尼崎総合医療センター(研究部) |
研究代表者 |
田口 奈緒 兵庫県立尼崎総合医療センター(研究部), その他, 医師 (90813056)
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研究分担者 |
荒木 智子 大阪行岡医療大学, 医療学部, 助教 (70438109)
林 知里 兵庫県立大学, 地域ケア開発研究所, 教授 (50454666)
片岡 裕貴 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (10814379)
大岡 由佳 武庫川女子大学短期大学部, 心理・人間関係学科, 准教授 (10469364)
遠藤 佑子 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (70822766)
福本 環 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (40650619)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | トラウマインフォームドケア / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究ではアートやヨーガでの患者の語り、およびナラテイブなインタビューを通して妊産婦のトラウマ体験を医療者にフィードバックし、ケアに反映することを目的とする。トラウマに配慮した医療者の態度や環境を明らかにしたケアプロトコルの実施よって、患者のメンタルヘルスを回復し医療者との信頼関係を醸成することを目指すものである。 採択決定後の2021年4月12日に、7名の研究者でキックオフミーティングを行い、研究計画を協議し、3つのステップを得た。すなわち①患者からのトラウマ体験の収集、②トラウマインフォームドケア研修およびワークショップ、③プロトコル開発前後の評価である。2021年度は以下の内容を実施した。 ①について:産科病棟の入院患者に対してアートまたはヨーガプログラムを行い、入院患者の心理状態とプログラムの効果についてPOMS2およびフェーススケールにより定量的評価を行い、アンケートにより定性的評価を行った。これは患者自身が入院や出産をどのように体験しているかを医療者にフィードバックするための「語り」を収集するステップである。 ③について:プロトコル開発前評価として産科病棟に勤務する医師、助産師、看護師、コメデイカルスタッフに対しトラウマインフォームドケアに関する質問紙調査を行った。また定性的調査としてZOOMを使ったフォーカスグループインタビューを実施した。インタビューの方法および分析については研究者間で質的研究の方法論、フォーカスグループインタビュー、グラウンデッドセオリーに関する勉強会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のプロジェクトが同時進行し、工程が多いため研究者全体だけでなくプロジェクトごとに定期的にミーティングを行い、研究者間の意思疎通を図り、役割分担と進捗状況を共有した。2021年度前半は各プロジェクトの研究方略を検討し、8月の病院の倫理委員会承認を経て、医療スタッフへ研究概要を説明ののち、10月から患者や医療者へのアンケート実施とアート・ヨーガプログラムを開始した。 ①患者からのトラウマ体験の収集に関しては、20-30症例のリクルート目標のうち2021年度に22症例でアートまたはヨーガプログラムを実施することができた。しかし産科病棟の特性として、患者の急変や入院期間の短さから、週1回の実施で予定の3回を完遂できたのはそのうち14症例であった。 ③プロトコル開発前の評価に関しては、アンケートがやや煩雑であったため、回答を得られたのは病棟スタッフの半数程度である51名であった。しかしながら、研究内容や目的を産科病棟へ周知することができ、本研究へ関心を持ち協力を申し出るスタッフをリクルートすることができた。またフォーカスグループインタビューへの参加もコロナ下で日程調整が難しく人数は限定的であったが(医師5名、助産師3名、コメデイカルスタッフ3名)、データとして有意義な内容が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は7名の研究者による研究方略の検討が中心となり、病院の倫理委員会承認を経て、患者や医療者へのアンケート実施とアートやヨーガプログラムの開始は10月以降となった。そのため予算の余剰分は2022年度のアートプログラムの実施、インタビュー分析および医療者向け研修に使用する予定としている。 ①患者からのトラウマ体験の収集:引き続きアートまたはヨーガプログラムを実施し、入院患者のトラウマに関して量的/質的分析を行う。その結果については周産期新生児学会等で発表予定である。流産/死産患者へのナラテイブインタビューに関しては、それ自体が大きなテーマとなるため、文献および自助グループからの当事者の声を拾い出し、医療者向けの研修やワークショップで活用する。 ②医療者向け研修:患者からのトラウマ体験を事例として医療者にフィードバックし、プロトコル作成に活かすことのできる研修を計画する。新型コロナウイルス感染状況により医療従事者の勤務状態が大きく変化するため、研修参加者の負担に配慮しオンラインと実地研修の併用を検討中である。 ③プロトコル開発前調査:新型コロナウイルス感染により2021年度に実施できなかったMOOSの環境調査を行う。実施したフォーカスグループインタビュー結果についてグラウンデッドセオリーを用いて分析し論文化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は7名の研究者による研究方略の検討が中心となり、病院の倫理委員会承認を経て、患者や医療者へのアンケート実施とアートやヨーガプログラムの開始は10月以降となった。そのため予算の余剰分は2022年度のアートプログラムの実施、インタビュー分析および医療者向け研修に使用する予定としている。
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