研究課題/領域番号 |
21K10933
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
加藤 承彦 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 社会医学研究部, 室長 (10711369)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 高度不妊治療(ART) / メンタルヘルス / Quality of life / 疫学研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、不妊に悩み高度生殖医療(体外受精等)を受けることで妊娠を望む女性の現状を明らかにし、エビデンスに基づいた政策提言を通じて、不妊治療患者への支援拡充を促進することである。 今年度は、3年計画の1年目に該当し、高度不妊治療を始めた女性約500名を対象とした追跡調査の完了、蓄積したデータの整備、データ分析を主に行った。まず、初回調査の情報を用いて、高度不妊治療初期の段階でのメンタルヘルスの状況を分析し、約半数以上が軽度以上のうつ症状を示していることを明らかにした。この知見に関しては、新聞などのニュースメディアにも多く取り上げられた。また、現在、自由記載欄のコメントを質的に分析し、社会背景に関する量的情報と重ね合わせたミックスメソッドの手法を用いた和文論文原稿を作成し、投稿中である。本分析では、高度不妊治療のどのような部分に女性がストレスを感じているのかを明らかにしており、「先の見えない不安」などが主要なトピックとして挙がっている。論文が掲載された際には積極的に広報活動を行い、不妊治療には、経済的な支援のみならず、メンタルヘルスや情報提供の部分においても支援が必要であることに関しての社会の認知を高めたい。 現在、不妊治療と就業の継続との関連および不妊治療中に妊娠された方のメンタルヘルスについての分析も共同研究者と鋭意進めている。2022年4月から、不妊治療に対しての保険適用が始まり、不妊治療に対する社会の関心は高いと予想されることから、本研究を通じて貴重な知見が提供できると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調にデータ分析を進めている。計画当初用いる予定であった出生動向基本調査は、今のところ活用の必要性が発生していないが、今後、必要に応じてデータ利用申請を行い、データ分析を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きデータ分析を行うともに得られた知見を積極的に情報発信し、社会に還元していきたい。申請時点では、海外先進国における公的支援の状況についても文献調査を行う予定であったが、ほぼ同様の内容の調査が、厚生労働省受託の調査として実施されており、2021年に報告書(野村総合研究所)が作成されていることから、本研究ではこの部分に関しては省略することとした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加した学会がオンラインで実施されたため、旅費等が発生しなかった。また、人件費に関して、別財源も活用することができたため、当初の執行予定額を下回った。
|