研究課題/領域番号 |
21K10963
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
谷口 珠実 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10258981)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨盤底筋訓練 / 筋電測定 / 高齢者 / 集団指導方法 / フレイル予防 |
研究実績の概要 |
下部尿路症状を自覚して治療を求めた骨盤底機能障害を有する高齢女性において、骨盤底筋訓練実施時の骨盤底筋群の筋力と腹横筋の筋力を測定した。これまで報告されている若年者の協働収縮を示す筋電図波形と比較すると、個別に測定した対象者の協働収縮は認められず、骨盤底筋群の筋力と腹横筋の筋力との相関関係も有意性は示されなかった。すなわち、若年女性では骨盤底筋群の収縮時に、骨盤底筋群と腹横筋は協働収縮していると報告されているが、下部尿路症状を自覚して骨盤底機能障害を有する高齢女性においては、骨盤底筋群と腹横筋は協働収縮が示されていない。若年者の協調運動とは異なる結果が示されていることから、有症状の高齢女性には、腹横筋を収縮することを介して骨盤底筋群の訓練を行う指導ではなく、骨盤底筋群の収縮と弛緩を確実に確認する指導を実施することが望ましいと考える。 高齢者の集団指導においては、腹横筋の協調運動を見越して骨盤底筋訓練時の骨盤底筋の収縮を腹横筋の動きと連動させて指導を行うという方法では、骨盤底筋の正しい収縮を捉えているとは確定できないことが示された。そこで、集団指導時にも骨盤底筋の動きに確実に連動する体表からの指導方法としては、腹横筋を代用することは不適切であり、その他の方法が必要であると考えた。 また、測定の対象者として、フレイル群と非フレイル群の骨盤底筋群の収縮力の比較を行い、有意差は示されていない。すなわち、フレイル群においても骨盤底筋訓練は有効であり、筋力を強化する骨盤底筋訓練を実施するための医療者からの指導は継続すると良いと考える。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で外来受診者が減っている中でのリクルートであったため、フレイルを有する患者が受診控えとなっていたりフレイルが進行して受診できない状況も考えられたため、今後の受診者でフレイル患者のリクルートを増やして分析を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で外来受診者の減少並びに、触診や筋電図測定の非実施時期があり途中遅れが生じた。 現在までに外来を受診した有症状の高齢女性30名に対して、骨盤底筋群と腹横筋の筋電図を測定し、協調運動の有無について検討を行っている。また筋電図を用いたバイオフィードバック療法を実施して、医療専門職の指導下による骨盤底筋訓練を実施した。 高齢女性のフレイルの有無を判別して、フレイルの状況と骨盤底筋群の収縮力との比較を行っている。外来受診患者では、フレイル有群の数が少なく、フレイルの有無による骨盤底筋の収縮力の差は示されていない。外来受診者数も徐々に増えつつあり、対象者を増やすことが分析上必要であり、望ましい結果につながると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の研究期間の延長により、外来受診者に対する測定数を増加する。 遅延理由にも述べた通り、新型コロナ感染症により、骨盤底機能障害による有症状高齢女性の外来受診が減少したために、目標とした対象者数に至っていない。特に、フレイル高齢女性達は、新型コロナウイルス感染症の予防のために外出を控えてよりフレイルが進行してしまい、独歩の外出に影響を及ぼし外来受診に至っていないという現状がある。コロナ前の受診状況には完全には戻っていないものの、徐々に外来を受診する骨盤底機能障害の高齢女性も増加してきているため、今後も対象者のリクルートを続けてデータの集積に努める。また、高齢者を対象とする地域の健康増進やフレイル予防対策事業も、対面や集団での取組みが開始されつつあり、フレイル予防事業時に対象者のリクルートに努めることを方策として進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で一般泌尿器科外来を受診する高齢女性が減少したため、予測測定人数が不足したため、データ収集を延長する。データ収集の延長により、データ収集の筋電図測定を補助する看護職への支払いと、これまでの研究成果の学会発表時の交通宿泊費と学会参加費、並びに論文投稿費の使用が1年延期となった。
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