本研究は、高齢者の肺炎予防のためのセルフケアを開発することを目的に実施した。加齢に伴い嚥下機能や免疫機能が低下し、恒常性の維持が難しくなることから、高齢者は肺炎に罹患しても症状が出現しにくく重症化しやすい。そこで、地域在住高齢者を対象としたアンケート調査によるセルフケアの実態の調査及び肺炎予防のためのセルフケアとしての呼吸方法の効果を検討した。 500人を対象としたアンケート調査において、日常の予防行動としての帰宅時の手洗いは86.2%、うがいは54.2%が実施していた。マスクは全員が何らかの理由で装着しており、装着する理由や状況で最も多かったのはインフルエンザ等の流行時であった。口腔衛生は、歯磨きの1日の歯磨きの実施回数の平均は2回であった。日常の予防行動で最も実施されたいた手洗いについて、地域在住高齢者の手洗い方法の観察と手洗い実施前後での掌の細菌コロニー数を測定した。その結果、手洗い所要時間の平均は47.0秒、手洗い実施前後での掌の細菌コロニー数に有意差は認められなかった。 令和5年度は地域在住高齢者を対象にアンケート調査、嚥下機能、体力、睡眠の評価、唾液採取による secretoty immunoglobulin A (sIgA) 等の測定と腹式呼吸を実施した。一定時間の腹式深呼吸の実施前後の比較ではsIgAに有意差が認められたが、1ヶ月間の腹式呼吸の継続による有意差は認められなかった。腹式呼吸によるsIgAへの効果が期待されるが、単回実施と継続実施による効果及びその特徴を精査する必要性が示唆された。
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