研究課題/領域番号 |
21K11051
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
益満 智美 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (10788136)
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研究分担者 |
宮田 昌明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00347113)
丹羽 さよ子 鹿児島国際大学, 医歯学域医学系, 教授 (00197550)
牧迫 飛雄馬 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70510303)
田平 隆行 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50337432)
大石 充 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50335345)
窪薗 琢郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (00598013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 睡眠時間 / 睡眠の質 / 地域在住高齢者 / CAVI |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、健康寿命の延伸を目指して、動脈硬化における睡眠と入浴習慣との関連を検討し、睡眠や入浴習慣への介入により動脈硬化やADLおよび認知機能が改善するかを検討することである。本研究では、超高齢社会が特に進んでいる鹿児島県垂水市で、以下の横断研究と介入研究を行う。 研究①睡眠時間や入浴習慣と動脈硬化の指標である心臓足首血管指数(以下、CAVI)との検討: 垂水研究2021-2022年度の健康チェックに参加し、睡眠調査を希望した対象者にアクチグラムを使用した客観的睡眠時間、睡眠の質、入眠潜時とCAVIとの関連を分析したと結果、有意な関連は認めなかった。 研究②睡眠状況との関連要因の検討:垂水研究2019年の健康チェックに参加した65歳以上の高齢者を対象において、主観的な睡眠時間と質における血清脂質値と血糖値との関連を検討した結果、FBSにおいて8時間睡眠群では、6時間未満群(p = 0.01)や6-8時間群 (p = 0.04)に比べ、有意に高かった。LDL-Cにおいて、8時間以上の睡眠群では6時間未満に比べ、有意に低かった(p = 0.03)。垂水研究2021年のピッツバーグ睡眠調査票に回答した65歳以上の152名を対象に、日常生活の中で自覚する痛みや不快感と痛みによる日常生活行動制限が睡眠に与える影響について検討した結果、痛みや不快感があるものは、ないものと比べて、睡眠障害を有する者が有意に多いことが示された(オッズ比2.49, p=0.014)。 研究③地域在住高齢者において睡眠や入浴習慣への生活習慣への生活改善の介入:報告会で睡眠調査の結果をフィードバックし、良い睡眠をとるために日常生活で取り入れやすい取り組みを紹介した。また、相談できる窓口を設けて対応した。今後は、縦断研究で睡眠や入浴習慣についての生活改善介入の効果を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度、7月から12月にかけて鹿児島県垂水市で行われた「たるみず元気プロジェクト」の健康チェック(全10回)を実施した。睡眠に関する調査は、調査を途中で中断した4名を省いた244名のデータ分析を終了し、参加者全員に1週間平均の結果報告と良い睡眠をとるための日常生活の過ごし方についての資料を作成して配布した。また、報告会では、相談できる窓口を設け、対応した。年度初めの計画では7月から12月にかけて実施し、12回で予定されたすべての方の健康チェックを終える予定であったが、会場の使用状況などにより最終的には10回の開催となり、健康チェックの予定人数を調整して12月に終了した。 垂水研究2021-2022年度の客観的睡眠の時間と質とCAVIとの関連を分析したところ、有意な関連は認めなかった。 垂水研究2019年の健康チェックに参加した65歳以上の高齢者を対象において、主観的な睡眠時間と質における血清脂質値と血糖値との関連を検討した結果、8時間以上の睡眠はFBSの上昇やLDL-Cの低下と有意な関連があったが、睡眠の質と血清脂質値や血糖値の間に有意な関連は認められなかった。この結果をまとめて2023年6月3日に開催された第59回日本循環器予防学会学術集会で発表した。 垂水研究2021年の健康チェックに参加し、ピッツバーグ睡眠調査票に回答した65歳以上の地域在住高齢者152名を対象に、日常生活の中で自覚する痛みや不快感と痛みによる日常生活行動制限が睡眠に与える影響について検討した。多変量解析の結果、痛みや不快感があるものは、ないものと比べて、睡眠障害を有する者が有意に多いことが示された(オッズ比2.49, p=0.014)。この結果をまとめて、2024年3月2日に開催された日本老年医学会九州地方会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
垂水研究2021-2022年度の客観的睡眠の時間と質とCAVIとの関連を分析したところ、有意な関連は認めなかった。垂水研究2023年度のデータを追加し、横断的な解析を行い、関連について検討していく。また高齢者に多い睡眠障害のパターンとして睡眠相前進症候群や不規則型睡眠覚醒パターンが報告されている。これらの睡眠パターンが将来の動脈硬化に影響を及ぼしている可能性があるため、客観的に評価した睡眠変動(睡眠時間,睡眠の質,入眠潜時,睡眠パターンの種類や規則性の有無)と動脈硬化度や精神的状況との関連性を横断的および縦断的研究により検討していく予定である。 入浴や温泉入浴習慣とうつ傾向との関連について、多変量解析において温泉入浴頻度が週1回以上は、週1回未満と比較し、うつ傾向との関連は有意に低いことが明らかとなった。この結果をまとめて2024年6月1日、2日に開催される日本温泉気候物理学医学会に演題登録し、発表予定である。今後、論文投稿予定である。 アクチグラムを使用した客観的睡眠時間と自己申告された客観的睡眠時間の乖離の実態と主観的睡眠時間と客観的睡眠時間の差(主客時間差)が健康に与える影響について、多変量解析において、主観的睡眠時間と客観的睡眠時間の乖離は睡眠効率の低下および白血球数の増加と関連していることが明らかとなった。この結果をまとめて今後、学会で発表予定である。 2024年度の調査は6月末から10月にかけて、2023年度と同様に睡眠測定機器を用いてデータを収集し、2021~2024年度のデータも含めて横断的・縦断的研究を検討している。また、参加者の状況をみて機器の追加購入を検討し、多くの方に参加していただけるように準備していくことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、測定使用機器を10台追加購入したため予約者に対応した調査が少なく、レターパックの使用が少なかった。また、アルバイト雇用については、他予算で計上したため次年度使用額が生じた。 2024年度は、比較的調査日程が近く計画されており、調査当日に機器を持ち帰れないことが生じる日程が増えるため、レターパックの購入と機器購入をする予定である。
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