研究課題/領域番号 |
21K11068
|
研究機関 | 藍野大学 |
研究代表者 |
西上 あゆみ 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (30285324)
|
研究分担者 |
渡邊 智恵 日本赤十字広島看護大学, 看護学部, 教授 (00285355)
松本 晃子 藍野大学, 医療保健学部, 助教 (50813622)
宮岡 裕香 藍野大学, 医療保健学部, 助手 (60882909)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 病院 / 看護師 / 防災リテラシー / 災害看護 / 備え |
研究実績の概要 |
近年、大規模災害発生が想定される我が国において、医療分野において災害に備えることは言うまでもなく重要なことである。また、各医療施設においてBCPを念頭に置いた防災対策は進みつつある。しかし、いくら組織が備えていても想定以上の災害が発生したとき、備えだけでは対応できない。災害時の適切な行動を促すためにはその場にいる人間の判断が影響することが多い。 本研究の目的は、病院における看護師の防災リテラシーを明確にし、その実態を確認した上で、防災リテラシーを高める方策を見つけることである。令和3年度は、防災リテラシーに関する看護師へのインタビュー調査を計画していた。具体的には病院に勤務する災害看護専門看護師、または近年の災害発生時に被災地病院で活動した看護師に、防災リテラシーに関する能力とはどのような能力と考えるかについて質的調査で明らかにしようとした。調査内容を検討するにあたり、医療分野に限らず、防災リテラシーの先行研究に関して文献検索を十分に行うこととした。具体的には、①辞書、②先行研究等を対象にした。延べ約400の文献を検討したところ、一般人を対象とした防災リテラシーの記述が多く、看護師を対象にしたものは少なかった。しかし、複数の文献から、防災リテラシーは「災害を軽減し、準備し、対応し、回復するために、知識を得て、脅威を理解し、必要な備えを行っておくことと、とっさの行動への自信をつけておくこと、情報に基づいた意思決定を行い、指示に従う個人の能力、適切な行動をとる」などであるとまとめていくことができた。そこで、調査に関して、この結果を参考にインタビューガイドラインを作成、研究倫理審査の承認を3月に得ることができた。しかし、まん延防止等重点措置の発令中のために、インタビュー依頼自体が難しく、調査の実施ができない状況となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究を進めるうえで、改めて医療分野における防災リテラシーについての先行研究を確認したが、医学中央雑誌では十分な先行研究を見つけることができなかった。そこで医療分野に特化せず、先行研究を確認することで時間を要するところがあった。このため、当初予定していた研究倫理審査を受ける時期が遅くなってしまった。災害看護に関する実践や報告においても、本研究でターゲットにしている自然災害に関する報告よりもコロナ禍での対応の報告が増え、研究対象者を検討することに苦慮している。 くわえて本研究の対象者は災害対応に経験のある看護師としている。また、豊富なデータを持つ看護師をターゲットにしていることから、研究対象者として災害看護専門看護師、救急認定看護師などを想定した。これらの看護職は災害拠点病院の所属である看護師の可能性もあった。つまり、研究対象者はコロナ禍において、最前線で対応している病院であり、勤務している看護師といえ、調査を進めるうえで、配慮をする必要があると考えた。研究倫理審査受審が遅れたため、全国的にまん延防止等重点措置が発令されている3月に研究を進めることは、看護師の移動、退職も鑑み、進めることができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
先述のとおり、令和3年度は、防災リテラシーに関する看護師へのインタビュー調査を実施することができていなかったため、看護師の移動や新看護師の就職など4月上旬の繁忙期をさけ、調査を進めることとする。調査が進んだのちは、結果を早期に検討し、2年目の研究を進める。インタビューで明らかになった災害看護経験者による防災リテラシーの実践について内容をまとめていく。そのうえで、その内容の妥当性の調査を行う。 当初の予定では、日本災害看護学会誌、日本災害医学会誌等から災害看護経験者が明確になる学会誌を選び、2016年熊本地震以降の災害で活動報告されている看護師に防災リテラシーの項目についてその実践や妥当性について量的調査で研究を行う予定としていた。一方、本研究ではこれまでの研究実績から自然災害のような災害をターゲットに考えていたが、2020年、2021年は激甚災害の指定から見ても大きな災害の発生が少ない状況である。そこで過去の災害対応経験については、範囲を広げて量的調査を行うことを検討する必要があると考えている。 2020年発生した熊本豪雨災害において被災地に調査活動に入ったところ、被災した医療機関があるにもかかわらず、コロナ禍では医療従事者も全国的な派遣が難しくなっていた。このように今後は救援が得にくい状況下で、看護師が目の前の状況に対して、適切に行動することも想定される。このような新たに加わった災害対応への状況も鑑みて調査を進める必要があると考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、研究倫理審査の承認を受けるまでに時間を要したことと、新型コロナウイルス感染症拡大のために旅費を使用しての研究に関する会議、調査を実施できず、経費を使うことがなかった。経費として使用したのは、関連学会への参加費と交通費、文献の購入、調査謝礼の物品となった。 新型コロナウイルス感染症の収束状況によるが、次年度インタビュー調査が実施可能になった場合、前年度実施予定であったインタビュー調査が実施できるよう、調査経費(交通費、データ入力費)等に使用していきたい。収束が難しい場合でも、研究対象者への研究参加の負担を考慮しながら、オンラインでのインタビュー調査もくわえ、調査を進めるようにする。
|