研究課題
本研究の目的は、大腿骨近位部骨折(PFF)で周術期にある認知症高齢者の低栄養の実態と歩行再獲得に及ぼす影響について明らかにすることである。PFFで周術期にある高齢者の栄養評価の現状について全国調査を行った結果、整形外科病棟へ入院したPFF高齢者のうち34.8%が低栄養であることが明らかになった。低栄養のスクリーニングには、主観的包括的栄養評価(SGA)が最も多く用いられ、栄養評価指標は、多い順に身体計測では身長・体重・下腿周囲長が、血液検査では血清アルブミン(Alb)・総蛋白・ヘモグロビンが用いられていた。栄養評価時期における比較では、入院時のみ評価を実施する施設と比較して、入退院時に評価を実施する施設では、低栄養PFF高齢者の検出力が有意に高い現状が明らかとなった。PFFで周術期にある高齢者の低栄養が歩行再獲得に及ぼす影響では、PFFで整形外科病棟に入院した高齢者の「退院時の歩行状態」で、歩行再獲得群と歩行不能群の2群に分けたうえで、対象者の属性・疾患情報、栄養状態との関連を調査した。その結果、認知症がなく、術後2週時点で歩行不能群よりもAlb値が高値の対象者で歩行再獲得できていたことが明らかとなった。周術期にあるPFF高齢者のAlb値の推移では、歩行不能群で入院中の変化に有意差は認められず、低値が持続した一方で、歩行再獲得群では、入院時~術後2週、入院時~退院時のAlb値の有意な減少が認められ、十分な回復には至っていなかったことが示された。さらに、体重減少率が、両群において入院時~術後2週で有意差がなかったものの、歩行再獲得群で入院時~退院時の有意な上昇が認められ、早期の歩行再獲得による活動性の拡大が、術後2週以降の体重減少をもたらした可能性が示された。以上より、PFFで周術期にある認知症高齢者への栄養介入のためのプログラム開発の必要性が示唆された。
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臨床栄養
巻: 143 ページ: 787-791