研究課題/領域番号 |
21K11099
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
福井 郁子 帝京科学大学, 医療科学部, 講師 (50759842)
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研究分担者 |
伏見 孝子 つくば国際大学, 医療保健学部, 講師(移行) (10406671)
小林 京子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 教授 (30437446)
阿部 吉樹 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30630785)
野田 義和 帝京科学大学, 医療科学部, 講師 (50707362)
藤田 藍津子 東京家政大学, 健康科学部, 講師 (70721851)
川村 眞智子 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 病院 血液内科, 副部長 (80450592)
高田 大輔 医療創生大学, 国際看護学部, 准教授 (90634155)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小児がん経験者 / AYA世代のがん経験者 / 運動と栄養のWebプログラム |
研究実績の概要 |
小児がんの治療成績は現在8割近くまで改善しているが、その多くが様々な晩期合併症を抱えながら社会生活を送っている。晩期合併症は、心疾患、呼吸器疾患、二次がんなどの身体的問題だけでなく、心理的問題、社会的問題がある。また、AYA世代のがん経験者は治療しながら就労を続けるため、合併症や不調を抱えながら生活している。このような就労期にある若い世代のがん経験者への支援として、ICT(情報通信技術)を活用した健康維持プログラムが効果的であるといえる。本研究は、就労期の小児がん経験者とAYA世代のがん経験者に運動と栄養のWebプログラムに参加することで、晩期合併症への自己管理と予防・重症化予防ができるような健康習慣の獲得を目的としている。 平成30年度基盤研究Cにおいて、小児がんバージョンの運動と栄養のWebプログラムの試作版を作成した。プログラムは、『健康情報』『運動プログラム』『栄養プログラム』『データ入力』の4部構成から成り立っている。 令和3年度基盤研究Cにおいて、Feasibility Study①として、専門職と小児がん経験者の計15名からプログラムに関するインタビュー調査を行い、プログラムの内容の適切性と実行可能性を評価した。この研究結果から、Webプログラムの修正版を作成した。令和3~4年度にわたりFeasibility Study②として、6週間の短縮版のWebプログラムを小児がん経験者に実施してもらい、内容の適切性と実行可能性の評価をアンケート調査とインタビュー調査によって評価している。また、小児がん経験者へのWebを用いた運動と栄養の介入研究の文献レビューを行っている。令和4~5年度は、Pilot Studyとして、小児がん経験者に12週間のWebプログラムを実施してもらい、無作為化比較試験によりプログラムの効果を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度に実施したFeasibility Study①では、Webプログラムは短時間のビデオ視聴のため継続がしやすい、週1回の操作は実行可能、メニュー数が多いので飽きないと評価されたが、課題も多くみられた。修正部分は大きく4つである。①【健康情報】では文字ばかりでなく映像を用いる、疲労回復のための睡眠情報の追加、②【運動プログラム】では字幕を入れて運動強度を調整する、ウォーミングアップ・メイン運動・クールダウンを入れて心拍数の急激な変動を予防する、転倒予防のための椅子バージョンの作成、③【栄養プログラム】では代用食材の記載、パンフレットにレシピを掲載する、④【プログラム全体】では操作が分かりにくいため初回にzoomで説明が必要、定期的なzoomミーティングによる専門家およびピアサポートを受けるなど、修正点が明らかになった。 Feasibility Study②は、修正版を作成し、6週間に短縮したWebプログラムを小児がん経験者に実施予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大によって、研究協力者の募集を延期し、募集期間を延長することで、調査に遅れが生じている。Webプログラムの管理については、研究者とWeb業者が行うことで、データ入力管理とトラブル対応を行っている。また、フォローアップ体制として、適宜メールやSNS、Webプログラム上での通知、2週間に1回のzoomミーティングによる質問への対応、参加状況の確認、安全性の確保を行っている。 小児がん経験者へのWebを用いた運動と栄養の介入研究の文献レビューに関しては、現在、文献の選定、精読作業を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、引き続きFeasibility Study②を実施していく。現在、プログラム運営上の改善点、データ入力における問題点、研究参加者の反応、参加状況とフォローアップ体制、アンケート結果とインタビューデータを収集し、Webプログラムの評価を行っている。Feasibility Study②で明らかになった問題点から、メニュー内容をより実行しやすくなるように修正を行う。修正点に関しては、【栄養プログラム】では、現在の料理メニューでは料理初心者が調理するのが難しく、今後は手間の少ない簡単で、材料が少ない、コンビニで購入できる材料を使う、よく食べる魚を取り入れるなど、新たなメニューの考案が必要である。また、【運動プログラム】では、運動不足の人でも親しみやすい歩行プログラムや柔軟性を高めるストレッチを取り入れるなど、新たな運動メニューの考案が必要である。また、映像の編集を工夫することで、見やすくて飽きさせないことで継続性を高める必要がある。以上のような修正を行い、12週間のプログラムの更なる充実と継続性を高める工夫、移行理論と認知行動療法を取り入れたアプローチ方法を検討していく。 また、令和4年度は、Pilot Study実施に向けての準備として、長期フォローアップ外来でのリクルートを見据え、対象疾患の拡大を行う。Pilot Studyの無作為化比較試験には、量的研究者と協同して準備を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、Feasibility Study②で明らかになった問題点から、運動の熟練度(運動不足者と普段から運動している人)と料理の熟練度(普段料理しない人と料理をする人)によって、実行可能性が異なるため、運動と栄養のメニュー内容を変更、あるいは選択させる必要がある。より対象者にカスタマイズされたメニューにしないと、実行可能性を高めることが困難であるため、再度、運動と栄養の双方でメニュー作成、ビデオ制作が必要となる。また、ビデオ視聴を飽きさせず、実際の行動に取り入れられるように、ビデオ編集の技術向上が必要である。以上のように、人件費やビデオ編集作業、新メニュー追加におけるWebプログラムの仕様変更が必要となり、更なる開発費が生じる。Webプログラムでは、2週間おきのzoomミーティングによるフォローアップを行っているため、管理栄養士やインストラクターなどへの謝金が生じる。 令和4~5年度に行われるPilot Studyでは、実施に向けての準備として統計ソフトの購入、パンフレットの作成、アンケート使用料、Webプログラムの管理費などが生じる。また、プログラム参加者50名程度の謝金も生じる。このような経費の増加を見越し、令和3年度の繰越金額を令和4年度使用とすることとなった。
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