研究課題/領域番号 |
21K11130
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
八谷 百合子 産業医科大学, 産業保健学部, 准教授 (40441852)
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研究分担者 |
丸山 崇 産業医科大学, 医学部, 准教授 (20533194)
犬島 浩 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授 (60367167)
立野 繁之 早稲田大学, 理工学術院(情報生産システム研究科・センター), 教授 (70243897)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 患者見守り / 認知症 / 無線機器 / 高齢者 / 入院患者 / 位置情報 / 安全性 / 看護負担 |
研究実績の概要 |
近年の我が国の高齢化に伴い65歳以上の高齢者人口は、3617万人、総人口に占める割合(高齢化率)は28.7%と過去最高となった。それに伴い病院の入院患者も高齢化し、原疾患に加え認知症を伴った患者が増加している。また、2019年度では日本全体で1万6775人の認知症高齢者が行方不明となっており、その中で460人は死亡した状態での発見だった。入院中の認知症患者は、病状が回復に向かうと看護師の見守りの目をかいくぐり、病棟を離れ院外に出る場合がある。看護師が早急に院内を探索することになるが、院内探索後も所在不明な場合は、広範囲な捜索を行うため患者の安全リスクは増加する。また、患者の位置が分からなくなるため、看護師が心当たりの場所を一つ一つ探しているのが現状であり、探索の看護負担は大きい。様々な状況下でも移動体の情報を遠隔で監視・通信する低コストの「患者見守りシステム」を構築し、患者の安全の早期確保及び看護負担の軽減が本研究の目的である。 2021年4月より、2020年に試作した腕時計型無線機器に新しい測定機能を加え、位置情報、動線と健康情報を収集できるように検討した。しかし、腕時計型無線機器を患者に装着させることが難しいとの課題が出た。そこで、より軽く実装性の高い無線機器の開発と見守りシステム全体について検討した。その結果、5種類の方法について検討することになった。まず、病院の床に金属を埋め込み、小さな無線機器で位置情報のみを感知する方法の検討を行った。病院の病棟に出向き、床の素材、病棟の電源の高さ、患者の動線などについて現場確認をした。その結果、病棟の床の素材では金属を埋め込むことが困難であること、適合する無線機器を作成することが難しいことを確認した。今後は、残り4種類の方法について検討し、実装可能な無線機器を作成し、患者探索実験を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、無線機器に新しい測定機能を加え、位置情報、動線と健康情報を収集できるようにし、無線機器を完成させる予定であった。具体的には、試作品無線機器の作成(位置情報、動線、健康情報)、大学敷地内の中継ルータの配置箇所の選定、試作品無線機器の予備実験と精度検証、試作品無線機器をもとに患者探索実験用に複数台作成する予定であった。これは、【目標】としていた、ZigBeeネットワークを構築するために、入院患者用の行動推定アルゴリズムを作成し、推定精度は95%程度を目指すため、小型で電波干渉に強く、安価な特長を持つZigBeeを用いることにより、無線通信の安定性の向上及び低コストの無線機器を作成し、商用回線常時使用費用の10%程度となることを目指すためである。 そこで、無線機器に新しい測定機能を加える検討を行った。しかし、腕時計型無線機器は、簡単に患者が外してしまい、測定が難しいとの課題が出た。ZigBeeの大きさ、電源の大きさ等の問題から小型化も難しい。そこで、より軽く実装性の高い無線機器の開発と見守りシステム全体について検討を実施した。その結果、5種類の方法について検討することになった。位置情報のみを検知する方法を検討した。病院の床面に金属を埋め込み、小さな無線機器で位置情報を検知する方法を検討した。しかし、床の素材が金属の埋め込みに不適なことが分かった。また、腕時計型無線機器の小型化は、別途検討中である。そのため、試作の無線機器は完成しておらず、試作品無線機器の予備実験と精度検証ができていない。現在までの進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
[2022年度]は、次のように計画中である。 [2021年度] は、無線機器に新しい測定機能を加え、位置情報、動線と健康情報を収集できるようにし、無線機器を完成させる予定であった。しかし、検討した結果、患者が簡単に腕時計型無線機器を外してしまい、患者に持続的に装着させることが難しいとの課題が出た。また、腕時計型無線機器の小型化が難しく、試作品を採用しないとなると、内蔵しているZigBeeを使用しないことになり、「患者見守りシステム」の全体を見直し、別の方法で構築する必要がある。試作品の検討も継続するが、研究者間で話し合い、他の方法も検討した。 まず、病院の床面に金属を埋め込み、小さな無線機器で位置情報を検知する方法を行った。しかし、床面に金属を埋め込むことが難しかった。再度確認し、今後も埋め込み式の研究を継続するか判断する。合わせて、別の「患者見守りシステム」が実施できる方法を検討する。一つ目は、ドローンによる検知である。これについては、研究者間で検討予定である。2つ目は赤外線による検知である。出入口に一定の赤外線を設置し、無線機器で検知する方法である。協力頂ける病院で調査を行う予定である。3つ目は、カメラを使った検知である。これについては、画像の検知となり、個人情報に気を付けながら検討を進める予定である。4つ目は、サーモグラフィによる検知である。サーモグラフィの特徴を生かし、個人情報の問題をクリアしながら、位置情報を検知する方法を検討する予定である。 次に、無線機器の小型化である。現在は腕時計型であり、患者が装着するには大きく、実装性が低い。より軽量で、位置情報も取得でき、消費電力も少なく、長時間稼働できる無線機器を検討し、試作する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
[2021年度]は、無線機器に新しい測定機能を加え、位置情報、動線と健康情報を収集できるようにし、無線機器を完成させる予定であった。完成した無線機器を使用し、患者探索実験の準備も行う予定であった。その際は、患者探索実験用に複数台の無線機器を作成する予定であった。しかし、検討した結果、腕時計型無線機器を患者に装着させることが難しいとの課題が出た。そのため、無線機器と「患者見守りシステム」の全体を見直し、別の方法で構築する必要性が出てきた。研究者間で話し合い、いくつかの方法を検討した。現在、新しい無線機器の作成と別の方法で「患者見守りシステム」を構築する予定である。このような状況のため、患者探索実験準備の費用と複数台の無線機器の作成費用を使用することができなかった。そのため次年度使用額が生じた。 [2022年度]は、新しい無線機器を完成させ、患者探索実験用に複数台作成し、患者探索実験を実施する予定である。
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