研究課題/領域番号 |
21K11138
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
横川 吉晴 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (50362140)
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研究分担者 |
木村 文一 信州大学, 学術研究院保健学系, 講師 (10621849)
北川 孝 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (10848922)
五十嵐 久人 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (90381079)
伊澤 淳 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (50464095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | フレイル / プレフレイル / 伝達的・批判的ヘルスリテラシー |
研究実績の概要 |
令和3年度は、当初予定していた協力自治体が新型コロナウイルス感染症対策を優先することとなり、地域連携事業として予定していた健診事業に付加した歩行速度・握力等の対面測定が中止となった。そのため当初の研究計画の実施が困難となり、新たな自治体の協力を求めることとなった。松本市では公募により月1回以上運動教室を実施している高齢者サークルを対象にフレイル健診事業を行う計画であり、この事業に協力・連携することによってフレイル評価指標の測定、生活習慣のアンケート調査を行うことができた。年度途中には感染警戒レベルの上昇のため調査中断期間が2回あったため、次年度に測定を繰り越す地域も認められた。 測定地区は35ヶ所76サークル、参加延べ人数は1088人であった。この内重複・測定未実施の230人を除く858人がフレイル健診受診者であった。日本語版フレイル基準による分類ではフレイルが 63人(7.3%)、プレフレイルが373人(43.5%)、非該当が422人(49.2%)であった。858人のうち女性694人(80.9%)が多く占め、平均年齢±SDは女性77.6±6.9、男性77.5±7.4、男性群での夫婦二人暮らしが77人(46.9%)であった。疾病がないと回答した割合は女性448人(64.6%)、男性100人(61.0%)であった。フレイルと認められたのは男性17人(10.4%)、女性46人(6.6%)であった。フレイル、プレフレイル、非該当の3群で比べると、手段的ADLでは差を認めないが、フレイル群が最も高齢で歩行速度が遅く、情報収集能力や社会参加能力が低く、認知機能や口腔機能の低下が伺えられた。伝達的・批判的ヘルスリテラシーにおいても、もっとも低い値であった。以上からフレイル・プレフレイルの割合は先行研究の発生率に類似しており、フレイル群やプレフレイル群の諸機能の特徴を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画当初予定していた自治体では新型コロナウイルス感染症対策を優先することから、大学医学部との地域連携協定に基づく研究協力を十分得ることができなくなった。地域連携していた自治体は人口9,689人の村で、感染症対策のための業務量増加により協力体制に余裕を持てなかったことや、三密対策を設けた上での特定健診実施により研究者の測定空間の確保が困難となったものと考えられる。調整により新たに別の自治体から協力を得ることができたが、当該自治体による令和3年度から開始されたフレイル健診事業の枠組みに応じて研究目的を遂行するため、計画の一部修正を進める必要が出てきた。フレイル健診事業はポピュレーションアプローチとしてフレイルリスクの高い人を抽出し、医療機関のフレイル外来につなぐことにより状態の進行を遅延させ、介護予防につなげる事業である。これにより研究対象が特定健診受診者から地域在住の高齢者に変更することになったため、当初計画にあった65歳未満の特定健診受診者が少ないことが想定された。令和3年度に実施ができなかったAIを用いたプレフレイルに関連するリスク要因の解析では、特定健診情報と連結させた際に未受診者が含まれるため、欠側値の存在を否定できない可能性がある。また令和4年度以降には解析で抽出したリスクを低減するための方略の見直しが必要である。すでに松本市ではフレイル予防のための情報発信を計画しており、そこに役立てる形でデジタルや紙媒体での提供の工夫が課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降は、1)令和3年度のフレイル健診事業参加者のデータと同年度の特定健診や介護保険、医療費の情報と結合させ、AIを用いたプレフレイルに関連するリスク要因の抽出検討をはかる。2)それに対応してプレフレイルにつながるリスク因子を軽減させるため、行動変容の必要を気づくことができるようなわかりやすい情報提供媒体の作成準備をすすめる予定である。自治体では引き続きフレイル健診事業が実施され、その中で予防講座(運動・栄養)の実施や医療機関によるフレイル外来での診察指導が行われる予定である。これらにあわせ、プレフレイルに位置づけられる集団への関与(ポピュレーションアプローチ)として、AGEsの測定とフィードバックを行う。3)AGEsは終末糖化産物であり、体内に蓄積された過剰な糖分と蛋白質が結合してでき老化を促進すると考えられている。AGEsとフレイルの関連を横断的に検討する。 4)令和3年度からの事業参加者にあたっては手段的自立や高次の活動能力としての情報収集や社会参加、伝達的・批判的ヘルスリテラシーを継続して追跡すること、5)令和3年度のデータとそれ以後の介護保険や医療費、死亡や転出などの転帰の情報と連結させ分析することも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための行動制限により、研究計画で予定していた調査ならびに機器の準備、学会出張等を実施することが困難であった。令和4年度では、新型コロナウイルスの感染対策を講じながら可能な限り最新知見の収集のため関連学会に参加するために旅費を使用する。
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