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2022 年度 実施状況報告書

多発性硬化症の認知症・疲労・うつに対する経頭蓋直流電気刺激療法(tDCS)の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K11165
研究機関富山大学

研究代表者

中辻 裕司  富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20332744)

研究分担者 小西 宏史  富山大学, 附属病院, 診療助手 (30816012) [辞退]
服部 憲明  富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70513141)
山本 真守  富山大学, 学術研究部医学系, 病院特別助教 (80816025)
石黒 幸治  富山大学, 附属病院, 療法士長 (90811258)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード多発性硬化症 / NMOSD / 認知症 / 易疲労性 / 抑うつ / 痛み / 直流電気刺激 / tDCS
研究実績の概要

多発性硬化症(MS)に対して近年7種の疾患修飾薬(DMD)が使用可能となり、運動障害から見た機能予後は格段に改善してきた。しかしそれに相反して、認知機能障害・易疲労性・抑うつなどが要因と考えられる失業率の高さやクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の低下がブレインヘルスの観点からクローズアップされるようになってきた。視神経脊髄炎(NMOSD)に対しても最近4種の新規DMDが使用可能となり、再発予防効果は高くなっている。NMOSDにおいては、MSにおける前述の問題に加えて、後遺症としての疼痛がQOL低下の要因となっている。このようにブレインヘルスの観点からみると、MS、NMOSDともに従来のDMDでは全く不十分である。最近、他の神経疾患や精神疾患における高次脳機能障害や疲労に対して、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation; tDCS)療法の効果が報告され、MS患者においても有効性が期待されるようになってきた。そこで本研究では、我が国におけるMS、NMOSDの認知障害・易疲労性・抑うつ・疼痛に対するtDCS療法の有効性を検証することを目的として本研究を開始した。
当院脳神経内科外来に通院または入院されているMS、NMOSDの患者で本臨床研究への参加に同意をいただいた方を対象とし、入院の上2週間のtDCS療法と通常のリハビリテーションを施行する。刺激の前後で高次機能評価(BRB-N)、抑うつ(BDI-Ⅱ)、疲労(FSS)、痛み(VAS)などを実刺激とSham刺激のクロスオーバー試験で有効性を評価する。これまでスクリーニングとしてMS患者30名の高次脳機能評価を施行したが、その多くで高次脳機能低下が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本臨床研究のtDCS療法に先立って、当科に外来通院あるいは入院されたMS、NMOSD患者おいて高次脳機能の評価を行なったところ、認知機能低下の自覚のある方の多くと、自覚症状の無い方でも高次脳機能の低下が認められた。そこでtDCSによる刺激の前後で高次機能評価(BRB-N)、抑うつ(BDI-Ⅱ)、疲労(FSS)を評価したところ評価項目のいくつかで明らかな症状改善効果が認められることが判明した。ここで問題となったことは、実刺激群はもちろんであるがシャム刺激群においても高次脳機能、抑うつ、疲労のいずれかで効果が認められやすいことが判明した。tDCS療法はブラインド下で行い実刺激、シャム刺激をランダムに繰り返すこととしていたが、刺激療法担当医に刺激の種類がわかってしまうという欠点があり、完全なダブルブラインドではなかった。そこでいったん臨床研究を中止し、新規に研究計画を作成した。実刺激群とシャム刺激群を1:1とし、刺激順は第3者が決定し、刺激療法者、被験者ともに厳密なダブルブラインド下で遂行し、さらに実刺激、シャム刺激各1回の刺激で終了するクロスオーバー試験として申請した。審査は医療機器としてわが国で承認されていない刺激装置を使用する特定臨床研究でもあり、倫理申請から承認に半年余りの時間を要し2022年3月に承認された。以上の理由で再開に約半年余り遅れを取ったが、再開1例目を2022年5月から開始することができ、現在まで4名のMS、NMOSD患者に遂行している。内2名は終了しているがキーオープンしていないため判定は保留中である。

今後の研究の推進方策

前記進捗状況で記載したように、ある程度シャム効果も得られるtDCS療法の有効性を検討するため、厳密なダブルブラインドと実刺激、シャム刺激各1回で終了という厳しい研究計画が約半年の遅れはあったものの2022年3月に承認された。第3者が実刺激、シャム刺激の選択を決定し、刺激療法施行者、被験者、評価者にはわからない工夫をし、実刺激、シャム刺激1:1のクロスオーバー試験として遂行している。また本臨床研究では特にNMOSD患者を煩わせる後遺症としての疼痛を評価項目に加えたため、より広い観点からtDCS療法の有用性が検討できる。クロスオーバー試験は間に約3か月のブランクを設定しているため1名の完遂に約半年が必要である。現在完遂2名、遂行中が2名で、候補患者が待機中であるので今後逐次開始してゆく予定である。MS、NMOSD患者におけるtDCS療法の臨床研究は、国内ではいまだ報告が無く、新規性の高い臨床研究としての展開が期待される。またtDCS療法は脊髄小脳変性症、パーキンソン病や脳卒中後遺症など他の神経疾患の運動機能や認知症状に対する新規療法としてリハビリテーション医学と連携しながら様々な研究が遂行されており、MS、NMOSDを対象とした本研究成果は高次脳機能改善療法としてのみならず、多様な神経疾患、分野への応用研究を加速させると予想される。

次年度使用額が生じた理由

今年度購入予定としていたものが納入できず、次年度に繰越になったため

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Identification of double-stranded DNA in the cerebrospinal fluid of patients with acute neuromyelitis optica spectrum disorder2023

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto Mamoru、Okuno Tatsusada、Piao Jin-Lan、Shimizu Mikito、Miyamoto Katsuichi、Nukui Takamasa、Kinoshita Makoto、Koda Toru、Dini Haryuni Ratna、Mochizuki Hideki、Sugimoto Tomoyuki、Nakatsuji Yuji
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Neuroscience

      巻: 107 ページ: 129~132

    • DOI

      10.1016/j.jocn.2022.12.005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Adult-Onset Leigh Syndrome Due to an m.13513G>A Mutation2022

    • 著者名/発表者名
      Hirosawa Hiroaki、Nukui Takamasa、Noguchi Kyo、Nakatsuji Yuji
    • 雑誌名

      Internal Medicine

      巻: 61 ページ: 1627~1628

    • DOI

      10.2169/internalmedicine.8445-21

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 多発性硬化症治療におけるDMD反応性と免疫セマホリンSema4Aの関連の検討2022

    • 著者名/発表者名
      甲田亨, 奥野龍禎, 木下允, 望月秀樹, 宮本勝一, 新野正明, 清水優子, 山本真守,熊ノ郷淳, 中辻裕司.
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] Increased cerebrospinal fluid adenosine 5'-triphosphate in patients with Guillain-Barre syndrome.2022

    • 著者名/発表者名
      温井孝昌, 仁井見英樹, Haryuni Ratna Dini, 道具伸浩, 小西宏史, 林智宏, 山本真守,渋谷涼子, 松田憲幸, 廣澤宏昭, 古田理佐子, 前坂弘輝, 三井太一, 北島勲, 馬場孝輔, 中辻裕司.
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] フィンゴリモド関連進行性多巣性白質脳症の自験例および国内症例の検討2022

    • 著者名/発表者名
      前坂弘輝、小西宏史、廣澤宏昭、温井孝昌、道具伸浩、馬場孝輔、中道一生、三浦義治、中辻裕司.
    • 学会等名
      第63回日本神経学会学術大会
  • [学会発表] 多発性硬化症のDMD反応性と免疫セマホリンSema4Aの関連の検討2022

    • 著者名/発表者名
      甲田 亨、奥野龍禎、木下允、望月秀樹、宮本勝一、新野正明、清水優子、山本真守、熊ノ郷淳、中辻裕司.
    • 学会等名
      第34回日本神経免疫学会学術集会
  • [学会発表] NMOSDにおける11C-酢酸PETを用いたアストロサイトイメージング2022

    • 著者名/発表者名
      甲田 亨、奥野龍禎、加藤弘樹、木下允、白石直之、杉山靖子、木原圭吾、望月秀樹、中辻裕司
    • 学会等名
      第34回日本神経免疫学会学術集会
  • [図書] MSの病型と経過2022

    • 著者名/発表者名
      廣澤宏昭、中辻裕司
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      日本臨床社

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公開日: 2023-12-25  

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