研究課題/領域番号 |
21K11169
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
片岡 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (50749489)
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研究分担者 |
後藤 響 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 客員研究員 (90813436)
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脊椎圧迫骨折 / 遠隔リハビリテーション / 慢性疼痛 / 身体活動量 |
研究実績の概要 |
高齢者の脆弱性骨折の中でも脊椎圧迫骨折(以下,圧迫骨折)は最も発生頻度が高く,慢性疼痛に発展しやすい.高齢者の慢性疼痛は日常生活動作(ADL)能力の低下や循環器疾患の発症・増悪のリスクを高めるため,その発生予防は重要な課題である.一方,これまで研究代表者らは新鮮圧迫骨折患者に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy;CBT)理論に基づいた活動促進プログラムを開発し,標準的なリハビリテーション(以下,リハ)と併用すると腰背部痛や歩行距離および身体活動量(以下,活動量)が有意に改善することを明らかにした.ただ,圧迫骨折後の慢性疼痛の発生予防のためには,退院後の継続的な介入戦略の確立が不可欠で,その新たな手段になり得る方法としてICT(information and communication technology)機器を用いた遠隔リハがある.本研究では圧迫骨折後の慢性疼痛の発生予防に向け,入院中の活動促進プログラムを退院後も遠隔リハにて継続する介入戦略を開発することを目的とする.2021年度は,遠隔リハのツールや方法論について検討した.具体的には,ツールとしてSIM契約をしたタブレット(D-tab d-41A)を使用し,ビデオ通話アプリはGoogle Duoを利用することとした.また,遠隔リハは退院後3か月間,週に1回,合計12回実施することとした.遠隔リハは患者とセラピストが共同で設定した目標の達成状況の聞き取り,自主運動の促し,活動日記を用いた腰背部痛と歩数のモニタリングとペーシング,ADL指導とした.なお,活動日記を用いたペーシングは前週の痛みや歩数の状況に応じて,次週の目標歩数を決定して身体活動を促すこととした.これまでに,上記の方法で試験的に遠隔リハを4名に実施したところ3名が完遂,1名が試験とは関係のない急性増悪により中止となった.完遂した3名に関しては慢性疼痛に発展することなく,心理面,運動機能,身体活動量の増加が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は遠隔リハの方法論を決定することが目標であり,その点は達成することができた.さらに完遂ができた事例に関してはケーススタディも行えているため,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は圧迫骨折に起因する慢性疼痛の発生予防に向けた遠隔リハの効果について無作為化比較試験を行っていく方針である.遠隔リハ群は,上述したようにタブレットを使用した遠隔リハを退院後3か月間,週に1回,合計12回実施し,対照群は同様の頻度で電話にて体調の聞き取りのみを行うこととする.選択基準は,新鮮圧迫骨折を受傷した者,年齢50歳以上,屋内歩行が自立している者,日本語を理解できる者,本研究で使用するタブレットおよび電話の操作が可能な者とし,除外基準は視力障害を有する者,聴力障害によりタブレットや電話による通話ができない者,認知症やそれに関連した症状を有する者,重度の循環器や呼吸器疾患を有する者とする.なお,サンプルサイズは56例を予定している.また,研究成果発表については痛み関連学会ならびに理学療法関連学会にてケーススタディを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではSIM契約をしたタブレットを使用する.当該年度ではタブレットの通信料を多く見積もっていたため,次年度使用額が発生した.次年度使用額についてはタブレットの追加購入ならびに通信料に使用していくことを計画している.
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