研究課題
これまで申請者らは新鮮脊椎圧迫骨折(以下,圧迫骨折)患者に対する認知行動療法理論に基づいた行動医学的アプローチを開発し,標準的なリハビリテーション(以下,リハ)と併用すると腰背部痛や歩行距離および身体活動量(以下,活動量)が有意に改善することを明らかにした.ただ,圧迫骨折後は慢性疼痛に発展しやすく,その発生予防のためには,退院後の継続的な介入戦略の確立が不可欠で,その新たな手段になり得る方法としてICT機器を用いた遠隔リハがある.本研究では圧迫骨折後の慢性疼痛の発生予防に向け,入院中の行動医学的アプローチを退院後も遠隔リハにて継続する介入戦略を開発することを目的とする.2021年度には,遠隔リハの方法論について検討した.ツールとしてビデオ通話アプリGoogle Duoをインストールしたタブレット(D-tab d-41A)を採用した.また,遠隔リハは患者とセラピストが共同で設定した目標の満足度の聞き取り,自主運動の促し,活動日記を用いた腰背部痛と歩数のモニタリングとペーシング,ADL指導とした.2022年3月より圧迫骨折患者を遠隔リハ群と対照群に振り分け無作為化比較試験を開始した.遠隔リハ群は,上述の遠隔リハを退院後3か月間,週に1回,合計12回実施し,対照群は同様の頻度で電話にて腰背部痛の程度と体調の聞き取りのみを行うこととした.選択基準は,新鮮圧迫骨折を受傷した者,年齢50歳以上,屋内歩行が自立している者,日本語を理解できる者,本研究で使用するタブレットおよび電話の操作が可能な者とし,除外基準は視力障害を有する者,聴力障害によりタブレットや電話による通話ができない者,認知症やそれに関連した症状を有する者,重度の循環器や呼吸器疾患を有する者とした.目標症例数としては56例を予定しており,2023年3月末現在,遠隔リハ群7例,対照群7例が試験を完遂している.
2: おおむね順調に進展している
本年度は脊椎圧迫骨折に起因する慢性疼痛の発生予防に向けた遠隔リハ戦略の効果検証に向けて無作為化比較試験を開始し,現在14名が完遂している.
2023年度においても,目標症例数の達成に向け,無作為化比較試験を進めていく方針である.なお,サンプルサイズは56例を予定している.症例数に満たない場合は,研究期間の延長に関しても検討していく予定である.
遠隔リハの実施にかかる通信費を多く見積もっていたため,次年度使用額が生じた。次年度も通信費や物品費に使用するように計画している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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