近年、自律神経系への行動学的介入として心拍変動バイオフィードバック(Heart Rate Variability Biofeedback: HRVBF)が注目されている。HRVBFを行うことで、不安、ストレスの低減、抑うつの改善や認知機能の改善などの報告が散見されている。しかしながら、そのメカニズムに関しては十分に理解されておらず、効果を否定するような研究もあり、訓練効果に関して報告が一貫していない。また、どのような被験者がHRVBFによる自律神経系への介入の恩恵を受けるのかも明らかとなっていない。本研究は被験者を無作為にHRVBF群とコントロール群とに割付け、HRVBFによる訓練が被験者の不安低減に有効かを検証する。また、訓練前後の行動課題中、安静時の脳波を計測することにより、訓練効果の背景に脳活動の変化が存在するのかを検討し、HRVBFの効果のメカニズムに関わる示唆を得ることを目的とした。本研究の遂行によって、HRVBFの訓練効果の検証と自律神経系に問題が生じる、認知症、パーキンソン病、その他精神疾患患者に対する自律神経系への介入開発の一助となることが期待される。 今年度は無作為化比較試験のデータ収集を継続的に行った。現在、目標とする症例数のデータ収集が完了し、データ解析を行っている。また、データの一部に関しては途中経過として国内学会にて報告した。今後、データの詳細な解析を行い、結果をまとめ、国際学会や国際誌での報告を行う予定である。
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