研究課題/領域番号 |
21K11191
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中島 祐子 広島大学, 医系科学研究科(医), 共同研究講座准教授 (70457258)
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研究分担者 |
石川 正和 香川大学, 医学部, 教授 (60372158)
石井 陽介 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (70908227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超音波検査 / 変形性膝関節症 / 内側半月板逸脱 / 歩行動作解析 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究は歩行中の超音波画像評価と三次元動作解析の関係から、変形性膝関節症患者の力学病態を反映する半月板逸脱を減少させるオーダーメイドリハビリテーションを確立することを目指している。 今年度はエコーで取得された半月板逸脱波形から変形性膝関節症者を分類し、さらに動作解析手法と併用することで半月板逸脱と関連する運動力学因子を抽出、そして抽出因子を標的としたリハビリテーション介入の実現可能性について検討した。 現在54症例の変形性膝関節症者の解析が終了している。歩行中の半月板逸脱動態から3つのタイプに分類でき、それぞれ半月板逸脱と関連する運動力学因子が異なることを確認した。またリハビリテーション介入が、抽出された運動力学因子および半月板逸脱に及ぼす即時的な影響を検証した。2つのタイプにおいて、それぞれ抽出された運動力学因子の減少に伴った半月板逸脱の抑制反応を確認でき、リハビリテーション介入における実現可能性について一定の見解を得た。 今後は、残された1タイプにおける介入可能性を模索し、加えて即時的効果のみならず中期的効果を含めた検証を行うことで、半月板逸脱における実用的な臨床手段となりえるのか検討する。さらに、これらの知見をまとめ国際誌へ発表することによって、半月板逸脱における効果的な予防や治療戦略の学術的基盤に貢献できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「エコーによる変形性膝関節症の分類」と「半月板逸脱を改善させる理想的なリハビリテーション法の確立」に向けた研究を進めた。 「エコーによる変形性膝関節症の分類」に関しては、歩行中に生じる半月板逸脱の波形から特徴性を抽出した。54名の変形性膝関節症患者から得られた逸脱波形に対して主成分分析を用い、逸脱挙動量および挙動ピーク時間が特徴性として抽出された。さらに挙動ピーク時間の正常範囲を定義するため、健常高齢者10名を測定・解析し、比較検証を行った。その結果、健常高齢者と類似したピーク時間を有す正常群、早期および遅延発生する前期群・後期群の3群に分類することができた。さらに各群おける挙動量と運動力学因子の関連性を検討したところ、前期群はlateral thrustと1st内反モーメント、正常群で2st内反モーメント、そして後期群で屈曲モーメント積分値の運動力学因子の関連が明らかとなった。これらの関連する運動力学因子は、変形性膝関節症の進行を助長する力学的因子であり、異常な力学的背景における半月板逸脱を説明する信用に足る見解を示した。 「半月板逸脱を改善させる理想的なリハビリテーション法の確立」に関して、変形性膝関節症患者24名に対して、toe-out歩容指導と外側楔状足底板の装具療法が運動力学因子および半月板逸脱に及ぼす影響を検討した。結果として、装具療法では、前期群と関連するlateral thrustと1st内反モーメント、歩容指導では正常群と関連する2st内反モーメントの減少が半月板逸脱と同様に確認された。これらのことから、前期群に対しては外側楔状足底板療法、正常群に対してはtoe-out歩容指導が適切である可能性が示唆された。 これらの研究知見は、第33回日本整形外科超音波学会および第14回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会で発表を行い、国際誌へも投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「後期群における介入手法」、「介入の中期的な効果」、そして「半月板逸脱分類と損傷形態の関連」について検証し、これらの知見を国際誌に発表することを目標にさらなる研究を進めていく。 「後期群における介入手法」に関しては、歩行中の屈曲モーメント積分値を減少させる治療戦略が必要となる。そのため膝関節伸展運動を歩行中に促進できる歩容指導や装具療法によって、運動力学因子と半月板逸脱に及ぼす影響を検討する予定である。 「介入の中期的な効果」に関して、継続的な力学負荷軽減介入が、半月板逸脱の抑制効果を持続させ、そして変形性膝関節症者の臨床症状や進行に及ぼす影響を含め検証する予定である。この知見は、「半月板逸脱を改善させる理想的なリハビリテーション法の確立」の核となる部分であり、臨床実践に直接繋がる貴重な知見となると考える。 また「半月板逸脱分類と損傷形態の関連」について、分類された変形性膝関節症者の病態特徴を把握するため、半月板の損傷形態や部位など質的情報を比較検証する。この取り組みは、半月板病態に基づいた詳細な逸脱メカニズムの解明に寄与し、本研究の膝OA分類が信用に足る結果かどうか形態学的な側面から検証することができる。 最後にこれらの検証結果をまとめ、本研究の目標である「それぞれの病態に応じた、半月板逸脱を改善させる理想的なリハビリテーション法の確立」の答えを提示するとともに、国際論文の掲載を通して広く情報発信を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で学会にオンライン参加することも多く、出張の機会が減ったことで繰越金額は増えている。 次年度は海外出張も可能と考え、また国内でも現地での成果発表が増えると予想され、主には出張費に使用する予定である。
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