研究課題/領域番号 |
21K11199
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中田 純一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20365638)
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研究分担者 |
鈴木 祐介 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (70372935)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 迷走神経 / 血液透析 / 心肺運動負荷試験 / 透析関連低血圧 / 心拍数減衰応答 / 運動耐容能 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、心肺運動負荷試験より得られた運動後の心拍数回復で評価した迷走神経の再活性機能、および運動中の最大心拍出量(ml/min)を測定して心臓予備能を直接的に評価することで、慢性腎臓病患者の迷走神経障害と心筋症の病態機序解明およびこれら病態の突然死を含む主要な転帰への関与を明らかにすることを目的とする。 我々はこの研究計画に関連して、2つの論文を発表した。 1つ目は、末期腎不全患者の心拍予備能(自律神経機能)と心不全の重症度を反映する二酸化炭素換気当量の低下に伴う運動耐容能の障害が、活動量と歩行能力などの身体機能が保たれた患者においても早期より潜在的に存在し、その後の機能障害の一因となる可能性を報告した。この研究は心疾患の既往などが無く、身体機能が保たれた活動的な患者においても、その後の健康状態を良好に管理するために、早期に心予備能の状態を評価する必要性を示している。さらに、自律神経障害に伴う心拍応答、および潜在的な心予備能の病態解明とこの集団の転帰との関連性に焦点を当てる必要性が示唆されたものと考えている。 2つ目の報告は、運動後の心拍数回復で評価した迷走神経再活性機能の障害が、血液透析患者の透析関連低血圧および心臓死、非心臓死と強力に関連することを報告した。さらにこの研究は、透析関連低血圧を有する患者の高い死亡率のより根本的な原因が自律神経障害であることを示唆し、とりわけ迷走神経障害の病態解明と治療に焦点を当てるべきことを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は末期腎不全患者の運動後の心拍数回復で評価した迷走神経障害と最大心拍出量で評価した心臓予備能の病態、双方の病態の関連、さらに主要な転帰との関連性を明らかにし、これらの病態の重要性と病態を反映する指標を確立することを主要な目的としている。 現時点では、運動後の心拍数の回復で評価した迷走神経再活性機能の障害と末期腎不全患者の特有の病態、および主要転帰との関連性についてすでに報告済みである。最大心拍出量については、迷走神経障害の機能とともに現在評価中である。その中で、心臓1回拍出量は末期腎不全患者では高度に低下しており、より早期より障害されている可能性が明らかとなった。従って、保存期慢性腎臓病患者も含めて評価を実施し、この集団における心筋症の進行に伴うと思われる心臓1回拍出量低下が、運動耐容能低下にどの病期でどのように関与しているかを明らかにするために、データ採取を進めている。データ採取については、現在60例程度の評価を完了しており、概ね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
元々は末期腎不全患者を対象とした研究計画であるが、より詳細な病態機序を明らかにするために、保存期慢性腎臓病患者にも対象を拡大して研究を進めることで、この集団の迷走神経障害と心予備能の障害の病態(形成)とその重要性をより詳細に明らかにすることができる。 さらに、昨年度発表した論文では、迷走神経障害が心疾患関連の転帰だけでなく、心疾患に関連しない転帰とも強く関連することが示された。またこの機序として、迷走神経障害が持つ抗炎症作用が、この集団特有の栄養障害であるProtein-energy wastingを悪化させ、心疾患に関連しないイベントリスクを増加させることが想定された。従って、迷走神経の突然死を含む心血管疾患発症・増悪への関与、および心疾患に関連しない疾患発症や病態増悪への関与という、異なる病態へ関与する機序をそれぞれ詳細に検討していく予定である。
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