研究課題
神経疾患に伴い特徴的な運動障害が生じることはよく知られており、そのため神経疾患の臨床診断には運動障害の適切な評価が不可欠である。一方、臨床で広く使われている診断基準は医師の主観に依存した定性的なものが多く、客観的かつ定量的な運動障害の評価法が望まれている。本研究の目的は、小脳障害を対象に全身運動のデータ駆動型力学系モデリングを通して脳の制御信号を推定し、その制御信号の解析を通して神経疾患に特徴的な運動障害の原因を解明する方法論を確立することである。令和4年度までは複数の関節角間の協調を定量化するため、歩行運動中の関節回転角の多変量成分分析法を開発した。令和4年度は回転角の四元数が持つ数学的特性を活用し、四限数の自由度を減らす変換を行うことで、多変量成分分析を可能にした。開発した成分分析法を歩行運動データに適用することで、解釈可能な歩行成分を抽出することが可能となった。これは歩行運動中の関節角を力学系として定式化する上で重要な成果である。この成果に基づき、四元数で縮約した自由度から力学系の同定を試みた。データ駆動型に力学系モデルを構築することで、身体運動のどの自由度がその後の運動を決定づけるかを調べた。令和4年度までの成果を踏まえ、令和5年度は神経疾患、特に小脳性振戦を力学系から理解する研究へと展開した。特に小脳の内部順モデル機構に着目し、振戦が予測機能の障害の結果として生じること、また小脳皮質と下オリーブ核において振戦の異なる原因があることを議論した。上記の結果により、力学系モデリングから小脳障害を理解する本研究の目的は達成できたと考えられる。
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Molecular Psychiatry
巻: NA ページ: 1-11
10.1038/s41380-024-02419-6
CONSTRUCTIVE MATHEMATICAL ANALYSIS
巻: NA ページ: NA
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