研究課題/領域番号 |
21K11215
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松岡 若利 九州大学, 大学病院, 助教 (70748003)
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研究分担者 |
賀来 典之 九州大学, 大学病院, 助教 (50600540)
赤星 朋比古 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20336019)
鉄原 健一 地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市立こども病院(臨床研究部), 臨床研究部, 医長 (50861522)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大腿直筋 / マイオカイン / 超音波検査 |
研究実績の概要 |
具体的内容:小児集中治療室(PICU)に入室し、48時間以上滞在した患者を対象として大腿直筋の横断面積を入室日、入室後3、7日目に測定した。同時に、血液検査で入室日、入室翌日、入室後3、5、7日のマイオカイン(ミオスタチン、IL15など)を測定した。なお、大腿直筋の測定は検査者4人で行った。そのため、まず検査者間の測定精度を確立するために20例を対象に検査者間の信頼性を評価した。 大腿直筋の横断面積はすべての患者で経時的に減少することが確認できた。また、患者のミオスタチンが大腿直筋面積と同様に入室後経時的に低下することがわかった。一方、逆に経時的にミオスタチンが上昇する症例を認め、病態によってミオスタチンの経過に差があることが示唆された。今後さらに症例を蓄積し、ICU入院中の筋肉量減少とミオスタチンの相関を調査し、ミオスタチンが筋肉量低下のバイオマーカーとなりえるかどうかを検討する。また、ICU退室後の筋肉量の回復の経過を調べ、どのような患者で筋肉量が低下しやすく、回復しにくいのかを調べる。 意義:重篤小児患者において筋肉量の低下を実際に測定した研究は少なく、筋肉量と同時にマイオカインを測定した研究はない。 重要性:重篤小児患者では成人と異なり、人工呼吸管理中に覚醒させることは困難で早期リハビリテーション介入が限局的になりやすく、リハビリテーション導入の効率化が必要である。そのため、バイオマーカー筋肉量低下のリスク評価が可能になれば、より効果的にリハビリテーションを導入することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋量の測定方法を超音波検査に変更した。そのため、研究の初期段階として、超音波検査による大腿直筋の横断面積の測定の検査者間の精度を評価するため、約20例で4名の検査者間の一致を評価している。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響と思われる、重篤小児患者(特に救急外来より入院する患者)の減少により、患者数の蓄積に当初より時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
1:超音波検査による筋肉量測定の検査者間の一致を評価する 超音波検査は検査者間の技術によって差が生じ得るため、まず検査者による筋肉量測定の精度を検証し、確立させる。 2:重篤小児患者の筋肉量測定、マイオカイン測定を継続する 今後はICU退室、退院後も筋肉量測定を行なっていく。ICU滞在中はほぼ全症例で筋肉量の減少を認めたが、筋肉量の改善を今後フォローする必要がある。具体的にはICU退室後いつから改善するのか、改善しやすい症例と改善しにくい症例があるのかどうかを調査する予定である。また、ミオスタチンは筋肉量減少と実際に相関する可能性をすでに自験例で確認しているが、筋肉量減少の早期発見としてのバイオマーカーになりうるかはまだわからない。場合によっては、ミオスタチン以外のマイオカイン測定も検討する。さらに既知の筋肉量減少のリスク因子以外に、重篤小児患者により特異的な年齢や基礎疾患などの筋肉量減少のリスク因子の可能性について検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、骨格筋量の測定方法としてインピーダンス解析(BIA法)を検討していたが、8歳以下の基準値がないこと、体水分量の影響を受けやすいことから超音波検査に変更した。また、生体インピーダンス解析として購入を予定していた「InBody」を当院ICUで導入されたことから購入の必要がなくなった。なお、8歳以上には超音波検査と並行してインピーダンス解析による筋肉量測定も行なっている。
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