研究課題/領域番号 |
21K11223
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤井 澄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60284189)
|
研究分担者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
谷 里奈 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20783872)
川原 勲 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (80524975)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 中鎖脂肪酸 / ミトコンドリア / 細胞死 |
研究実績の概要 |
われわれはこれまでに中鎖脂肪酸がサルコペニアの改善に有効であることを明らかにしている。しかし、ラウリン酸は臭気などの点で臨床応用に問題を有することが指摘されている。そこで、その他の中鎖脂肪酸の効果について検討することにした。まず、がん性サルコペニアに対する作用を検討する前段階として、がん細胞への作用を本年度は検討した。中鎖脂肪酸(MCFA) は、LCFAとは異なる代謝を行い、カルニチンシャトル非依存的にミトコンドリア内に取り込まれることで、急速に酸化的リン酸化(OXPHOS)を引き起こす。このうち特にMCFAは担癌体における骨格筋や心筋に対し保護的作用することを見出した。一方、腫瘍における効果は不明な点が多くある。われわれは炭素数の異なるMCFAのオクタン酸(C8, OCA)、デカン酸(C10, CEA)、ラウリン酸(C12, 4LAA)を用いて腫瘍への影響を検討した。マウス大腸癌細胞CT26に3種のMCFAを処理すると、いずれのMCFAにおいても増殖抑制を示した。MCFAによってIC50は異なり、OCA>CEA>LAAの順に増殖抑制がみられた。腫瘍はWarburg効果として知られている解糖系依存的な代謝を行っており、ミトコンドリア生合成や不良ミトコンドリアの除去の機能が低下している。細胞死の原因を検討するために、ミトコンドリアから生じる酸化ストレス(ROS) に着目した。その結果、3種のMCFA全てにおいてミトコンドリアROSの増大が見られた。以上より、中鎖脂肪酸によって強制的にOXPHOSを生じさせることにより障害を有するミトコンドリアから過剰なROSが生じ、細胞死が誘導されることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中鎖脂肪酸のサルコペニアに対する作用の検討の前段階として癌細胞への作用を検討し、ミトコンドリア活性化効果が3種の中鎖脂肪酸に共通することが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、3種の中鎖脂肪酸の骨格筋への作用を検討して行く予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
中鎖脂肪酸の骨格筋障害への効果を動物実験で検討する予定であったが、年度内に終了しなかった。このため、この動物実験を行う費用を次年度使用額とした。
|