研究実績の概要 |
本研究の目的は、舌筋に対して一定負荷を加える舌筋力トレーニングが嚥下関連筋群の筋量と舌圧に及ぼす影響について検討することである。最終年度は、通いの場に参加する健常高齢女性9名(平均年齢78.0±5.1歳)を対象として8週間の舌筋力トレーニングを行い、トレーニング前後における舌圧、口腔機能、嚥下関連筋の筋量を比較した。舌筋力トレーニングには、舌圧トレーニング用具(ペコぱんだ,株式会社ジェイ・エム・エス)を使用し、自主トレーニング課題を行った。JMS舌圧測定器を用いて各対象者の最大舌圧を測定した後、6種類のペコぱんだから最適な負荷強度を選択した。評価項目は、最大舌圧、オーラルディアドコキネシス、嚥下関連筋群の筋量、EAT-10とした。舌筋および舌骨上筋群の筋量は、超音波診断装置(SonoScape,JE1, Medical Corp)を用いて、舌筋の筋厚とオトガイ舌骨筋の横断面積を評価し、画像解析ソフト(Image J, ver1.53e, NIH)で解析した。評価はベースライン、トレーニング4週間後、8週間後の3時点で実施した。8週間のトレーニング後、オトガイ舌骨筋の筋量が有意に増加したが、最大舌圧、オーラルディアドコキネシス、舌筋の筋厚およびEAT-10に有意な増加はみられなかった。 本研究の結果から、舌筋力トレーニングは舌の筋力(舌圧)と舌骨上筋群の筋量に影響を及ぼすことが示唆されたが、若年者と高齢者で効果が異なることから、トレーニングの負荷強度、回数、頻度、期間については対象者の能力に応じて決定するのが妥当と考えられた。トレーニング効果の指標として、超音波診断装置を用いた嚥下関連筋の筋量測定が有用となる可能性はあるが、複数の検者による測定では、対象部位にプローブを当てる際の統一した位置や角度、強さ、装置のキャリブレーション等について再検討する必要がある。
|