研究課題/領域番号 |
21K11238
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
荒川 高光 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (90437442)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マクロファージ / 寒冷刺激 |
研究実績の概要 |
骨格筋損傷に対する寒冷療法が骨格筋再生に与える影響を検証するため、C57BL/6Jマウスを用いて遠心性収縮による筋損傷を惹起させ、その動物にアイシングを複数回施した。 その結果、壊死筋線維の消失が遅延し、Pax7陽性衛星細胞の損傷領域への集積も遅延し、2週間後の再生筋線維の横断面積が小さくなっていた。この現象は、好中球などの炎症性細胞とM1マクロファージの集積が遅延してしまうことがきっかけとなって起こることが明らかとなった。本研究結果はJournal of applied physiologyに掲載になった(Kawashima et al., 2021)。 さらにWistar系ラットを用いて挫滅損傷による筋損傷を惹起させ、その動物にアイシングを1回施した。その結果、Pax7陽性衛星細胞の損傷領域への集積が遅延し、2週間後の再生筋線維の横断面積が小さくなっていた。M1マクロファージの集積は遅延していたが、M2マクロファージの集積にはアイシングの影響はほぼ観察されず、M2マクロファージへの転換に影響するIGF-1発現もアイシングによる変化はみられないことがWestern Blottingによって明らかになった。しかし、アイシングを施した動物ではTNF-α発現が低下していることが明らかになった。すなわち、アイシング後の筋再生が阻害されてしまうのは、M1マクロファージの集積遅延に寄るところが大きく、それと関連してTNF-α発現が低下してしまい、筋再生のきっかけとなる衛星細胞の集積や筋芽細胞への分化、増殖を抑制してしまうのではないかと考えられた。本研究成果は基礎理学療法学会にて発表した(宮崎ら, 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遠心性収縮による筋損傷においても、挫滅損傷による筋損傷においても損傷後の炎症性・抗炎症性マクロファージの動態を、免疫組織化学を用いて両マクロファージ細胞数や分布動態の分析は実施でき、論文としてて出版することができ、さらに現在投稿中のものが1本ある。サイトカインと成長因子であるTNF-αとIGF-1は、免疫組織化学とWestern Blottingを行うことができた。 さらに筋損傷の程度を変えて損傷程度を軽度にした動物で同様のアイシングを実施もできており、学会発表を行うことができている(長田ら, 2021)。 アイシング時間を変えて群間比較する実験も開始することができている。Western Blottingを実施する機会が増え、抗体や消耗品を前倒しで使用することで実験を既に開始することができている。 マクロファージの培養実験は現在進行中であり、2022年度中に結果が出る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
さらに筋損傷の程度を変えて損傷程度を軽度にした動物で同様のアイシングを実施もできており、学会発表を行うことができている(長田ら, 2021)。その結果を経て、アイシング時間を変えて群間比較する実験も開始している。 マクロファージの培養実験は現在進行中であり、2022年度中に結果が出る予定である。 現在のところ、骨格筋再生にとって有効な、損傷直後の寒冷刺激条件は、損傷程度によって寒冷刺激を用いるかどうかを考えなければならない、ということを提唱できるところまで進捗できている。 これらの結果から、骨格筋再生にとって有効な、損傷直後の寒冷刺激条件を広く提唱するよう、基礎理学療法学会、体力医学会でシンポジウムを開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりも研究が進行し、前倒しで研究費を使用した。様々な消耗品、備品の実際の購入費を抑制できたために次年度使用額とした。次年度使用額し当初の計画よりも減額されているが、初年度にWestern blottingの備品、消耗品を購入することができたため、当初の計画道理進行することで問題なく実施可能である。
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