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2022 年度 実施状況報告書

マクロファージの生体内・生体外動態解析による筋再生に有用な寒冷・温熱療法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K11238
研究機関神戸大学

研究代表者

荒川 高光  神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (90437442)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードマクロファージ / 寒冷刺激
研究実績の概要

前年度実施した実験の継続として、Wistar系ラットを用いて挫滅損傷による筋損傷を惹起させ、その動物にアイシングを1回施すものの解析を追加した。アイシングによってM1マクロファージの集積は減少した。アイシングはM2マクロファージには影響しなかった。アイシングはTNF-α発現、筋原性細胞数、再生筋線維のサイズの減少を引き起こした。アイシングによる筋再生の阻害はM1マクロファージに関係する現象として引き起こされていると示唆された。本研究成果はHistochem Cell Biol誌に掲載となった(Miyazaki et al., 2022)。
また、前年度から始めていた軽微な筋損傷モデルラットの作成を試みた。挫滅損傷時の鉗子にかける負荷を従来の500gから250gに変更することによって、全筋線維に対し約4%の筋線維が壊死する「軽度な筋損傷モデル」を確立できた。本筋損傷の程度は臨床の肉離れでも軽度な部類に相当すると考えられた。本モデル動物に従来の方法(Kawashima et al., 2021)と同様のアイシングを実施した。アイシングを行うと2週間後の筋線維横断面積が、無処置の動物よりも大きくなった。アイシングによってM1マクロファージの集積が減少することは従来と同様であったため、M1マクロファージが持つ二次的な筋損傷をアイシングによって抑制できたことや、炎症を早期に収束させたことが新しい再生を早期に促した可能性が考えられた。本研究成果はAm J Physiol Regul Integr Comp Physiol誌に掲載となった(Nagata et al., 2023)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

従来の筋損傷モデル動物におけるアイシングの効果はM1マクロファージに起因して起こるのではないか、という結果について論文として出版することができた。また、筋損傷の程度を変えて損傷程度を軽度にした動物で同様のアイシングを実施した結果についても論文として出版することができただけでなく、プレスリリースも行うことで広く知見を広めることができた。以上の実験は当初の計画よりも進行している。
現在、筋損傷時に筋や周辺から放出されるサイトカインの分析や、マクロファージの貪食能に関係する因子についてさらに解析を追加している。
マクロファージのin vitroでの機能解析は当初の計画どおりに進行しているが、若干遅れている。2023年度中に結果が出る予定である。

今後の研究の推進方策

アイシングを行うことでM1マクロファージの集積が減少するだけでなく、M1マクロファージそのものの能力に何らかの影響を与えていることが想定される。
そのため、in vitroでマクロファージの機能解析を行っている。培養下で周囲温度を変化させたときの、マクロファージの動態を解析していく予定である。
また、筋損傷時に筋そのものや周囲からのサイトカイン放出状況を分析することで、マクロファージとの関連性や、筋再生との関連因子が判明する可能性が高い。そのため、筋損傷時のサイトカインアレイを実施する予定である(当初の計画よりも進行)。
さらに、アイシングではM2マクロファージの動態が、アイシング非実施動物と比べてもあまり変化がない。この現象はM1マクロファージがM2へとタイプを転換するときのメカニズムに、アイシングがどのように関与しているのかを知る必要がある。マクロファージによる貪食がM2への転換のきっかけとなると考えられているため、アイシングによる、マクロファージの貪食能への関与を解析する予定である(当初の計画よりも進行)。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Icing after skeletal muscle injury with necrosis in a small fraction of myofibers limits inducible nitric oxide synthase-expressing macrophage invasion and facilitates muscle regeneration2023

    • 著者名/発表者名
      Nagata Itsuki、Kawashima Masato、Miyazaki Anna、Miyoshi Makoto、Sakuraya Tohma、Sonomura Takahiro、Oyanagi Eri、Yano Hiromi、Arakawa Takamitsu
    • 雑誌名

      American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology

      巻: 324 ページ: R574~R588

    • DOI

      10.1152/ajpregu.00258.2022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Icing after skeletal muscle injury decreases M1 macrophage accumulation and TNF-α expression during the early phase of muscle regeneration in rats2022

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki Anna、Kawashima Masato、Nagata Itsuki、Miyoshi Makoto、Miyakawa Motoi、Sugiyama Megumi、Sakuraya Tohma、Sonomura Takahiro、Arakawa Takamitsu
    • 雑誌名

      Histochemistry and Cell Biology

      巻: 159 ページ: 77~89

    • DOI

      10.1007/s00418-022-02143-8

    • 査読あり
  • [学会発表] 軽微な骨格筋損傷後のアイシングは筋損傷の拡大を抑制し筋再生を促進する2023

    • 著者名/発表者名
      長田樹, 川島将人, 倉内摩美, 荒川高光
    • 学会等名
      第128回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 骨格筋損傷後のアイシングがマクロファージ遊走因子の発現に及ぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      川島将人, 長田樹, 青木孝文, 濱田大幹, 渡邊知央, 小柳えり, 荒川高光, 矢野博巳
    • 学会等名
      第77回日本体力医学会大会
  • [学会発表] 軽微な骨格筋損傷後のアイシングは筋再生を早期化する2022

    • 著者名/発表者名
      長田樹, 川島将人, 倉内摩美, 荒川高光
    • 学会等名
      第77回日本体力医学会大会
  • [備考] 生体構造学研究室

    • URL

      http://www2.kobe-u.ac.jp/~arakawa/index.html

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公開日: 2023-12-25  

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