研究課題/領域番号 |
21K11240
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
黒瀬 智之 広島大学, 医系科学研究科(保), 助教 (20363054)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 間葉系幹細胞 / 模擬微小重力 / 血管内皮細胞 / 血管内皮栄養因子 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
虚血-再潅流モデルラットへの移植に用いるMSCの特性を生化学的に解析した。通常重力で培養した1G-MSC、模擬微小重力で培養したMG-MSCでの血管栄養因子の発現をReal-Time PCRとWestern blotで解析した。Real-Time PCRによる解析ではmRNAの発現量に差はなかったが、Western blotタンパク質の解析では、1G-MSCに比べてMG-MSCの血管内皮栄養因子の発現が有意に増加していた。MG-MSCで著しく増加していたのは、血管新生に関わるVEGFファミリーやAngiopoietinなどであった。 5週齢のSprague-Dawleyラットから脊髄を採取して、脊髄由来の血管内皮の初代培養を行い、継代して増殖させることができた。一方で、大動脈由来の血管内皮細胞の回収を試みたが、十分な細胞数を獲得できず、安定した増殖培養ができなかった。 血管内皮細胞へのMSCの効果を調べるため、アポトーシス誘導した血管内皮細胞とMSCの共培養を行った。アポトーシス細胞を検出するAnnexin-Vで染色し、FACSで生存細胞とアポトーシス細胞の割合を調べたところ、培地への過酸化水素による重度のアポトーシス誘導に対するMSCの影響は少なかったが、培地から栄養素を取り除いたりアポトーシス誘導剤による軽度のアポトーシス誘導に対してはMSC存在下で内皮細胞の生存率が高まった。また、1G-MSCに比べてMG-MSCを加えた場合に、内皮細胞の生存率が高まった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MG-MSCと1G-MSCを比較した際、mRNAの発現量に差はなかったが、タンパク質レベルでは血管栄養因子の発現が有意に増加していることを明らかにした。 ラットから採取した脊髄を元に、血管内皮細胞の初代培養を行うことができた。 アポトーシス誘導した血管内皮細胞とMSCの共培養を行ったところ、軽度のアポトーシス誘導に対してはMSC存在下で内皮細胞の生存率が高まったが、有意性とメカニズムは検証中である。
|
今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞に対するMSCの効果を明らかにするとともに、そのメカニズムについて調べる。アポトーシス誘導を行った内皮細胞に対して、1G-MSCかMG-MSCを加えることによる血管内皮細胞の変化を観察する。共培養後の血管内皮細胞をセルソーターでMSCと分離して回収する。その際、生存した細胞をアポトーシスを起こした細胞を分けて回収する。それぞれの細胞の変化を調べるため、RNAを抽出してReal-Time PCRでそれぞれの特性を調べる。 虚血-再潅流による脊髄損傷モデルラットに対して1G-MSCかMG-MSCを投与後の脊髄の変化について詳細に調べる。脊髄の損傷部周囲を採取し、透明化処理を行なった後、血管と血管内皮細胞に対する栄養因子や血管内皮接着分子を免疫染色する。共焦点レーザー顕微鏡で3次元的に観察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
発注した海外製品の製造中止や発送遅れによる。 血管内皮細胞に対してアポトーシスを誘導する試薬が製造を見合わせたり、細胞培養に使用する6ウェルプレートの納期遅れがあった。 アポトーシス誘導試薬は別メーカーの代替品を購入して、アポトーシス誘導した内皮細胞に対する間葉系幹細胞の保護効果を調べる。
|