雄性SDラットの左大腿動脈から挿入したバルーンカテーテルを膨らませて脊髄を虚血した.再潅流直後に,PBSか骨髄由来MSCを注入した.血管内皮と結合するトマトレクチンを注射し,脊髄を採取した.凍結横断切片を作製し,血管は抗PECAM-1抗体で,血流の有無はトマトレクチンに対する染色で,二重標識した. 虚血-再潅流後,運動機能が著しく低下したが,MSCを移植した群では徐々に改善した.虚血-再潅流から1日後,開通している毛細血管が減少しており、3日後の開通毛細血管はさらに減少し,血流低下が持続したと考えられる。MSC投与による改善は僅かであった. 5週齢のSDラットから脊髄を採取し、血管内皮細胞を分離して培養した。培養血管内皮細胞に対して、過酸化水素添加やアポトーシス誘導剤添加、低栄養環境での培養を行い、アポトーシスを誘導した。MSCをPKH 67で染色後に、アポトーシス誘導後の内皮細胞培養環境に加えて共培養を行った。24時間後、72時間後に細胞を回収し、トマトレクチンで血管内皮細胞を染め、Annexin Vを用いてアポトーシス細胞を染めてフローサイトメトリーで解析した。 アポトーシス誘導後の培養血管内皮細胞は、いずれの条件下でも生存率が低下し、アポトーシスを起こした細胞の比率が増加した。MSCを添加した共培養により、低栄養環境における血管内皮細胞の生存比率が増加し、アポトーシスの比率が減少した。これは、MSCが血管内皮細胞のアポトーシスを抑制することを示唆する。 損傷した中枢神経系組織において、移植したMSCが血流へ影響を及ぼしはしなかったが、損傷部付近における血管内皮の維持に貢献することが示唆された。
|