研究課題/領域番号 |
21K11244
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
美津島 隆 獨協医科大学, 医学部, 教授 (80279348)
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研究分担者 |
秋山 純和 東都大学, 幕張ヒューマンケア学部, 教授 (10285976)
入澤 寛 獨協医科大学, 医学部, 講師 (70467231)
高森 正祥 獨協医科大学, 医学部, 研究生 (80898007)
瀬尾 芳輝 愛知学泉大学, 家政学部, 教授 (90179317)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋活動 / 動作解析 / MR像 / 主動筋 / 共同筋 / 拮抗筋 |
研究実績の概要 |
骨格筋の動作解析には筋電図(表面、針)検査、超音波検査、MRによる検査などがある。中でもMR機器による画像解析は、侵襲が少なく、メリットがある。四肢運動動作後MR機器にて撮像し、標的部位の活動筋と非活動筋の様子が1スライスの画面で観察できるというすなわち画像解析により、上下肢における主動筋や共同筋、拮抗筋などの活動状況を観察できる。 本年度は健常者における上肢運動の際の筋活動を観察することとした。健常者対して前腕の回内、回外運動や鍋の上下運動などを行い、その時の筋活動を観察するというプレリミナリーな研究をおこなった。 1)前腕回内運動に動員される骨格筋を解析した。健常成人11名(男性7名、女性4名)に対して、左前腕回内運動を徒手筋力計で測定し、100% MVCを決定後,それぞれ25%,15%,5%MCVの重錘を負荷して等張性収縮運動を2秒周期で行った。前腕回内運動は疲労により運動継続が困難となるまで繰り返し、その後すぐに前腕部を対象にMRI装置を用いて撮像した。その結果、主動作筋である円回内筋は運動後、T2値が上昇したが、拮抗筋である回外筋はT2値に変化がなかった。一部の被験者では橈側手根屈筋,手根伸筋,指伸筋の活動が検出された。 2)ものを把持し、動作を行うときの手内筋の活動筋を分析する目的に、健常成人11名( 男性7名、女性4名)に対して、最大握力の5%に相当する負荷量を片手鍋に入れ、非利き手で把持した鍋の上下運動をおこなった。上下運動は肘屈曲70°-90°/2秒程度で自覚的運動強度(Borg scale)での非常にきつく感じるレベルまで行い、鍋の上下運動では際に長・短橈側手根伸筋が活動を認めた。手内筋では対立筋の活動を予想したが数名の変化にとどまる結果となった。鍋の上下運動では肘屈筋群と前腕伸筋を主に使用し、手内筋は鍋の把持として軽く添えると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在のところ進捗状況としては遅れていると言わざるを得ない。 対象がヒトであることからコロナ禍の影響で、基本的に被験者の学内立ち入りが思うようにいかず、実験計画自体が一時頓挫してしまったことが大きな要因である。さらに期間中MR機器の学内移設により、移設に伴う環境の変化(磁気状態や環境温度、地震など)から、MRの撮像状態が不安定となり、思うようにデータが収集できなかった。またMRのプローべが故障し、その修理に手間取り(専門の業者に依頼する必要があるが、コロナ禍の関係で、学内への出入りが禁止されていた期間が長かった)このため断続的にMR機器が使用できない期間が続いた。しかし、2022年度からはMR機器の状態が安定しいくつかのプレリミナリーな研究活動が行えるようになった。 現在は、まず健常者を被験者として、前腕の運動を中心に筋活動を評価して、徐々にデータを収集している状況である。今後はなお訓練負荷量を定量化するために筋力測定が必要であるが、上肢の筋力測定については握力計のほか上肢用の筋力測定器の購入を予定している。また十分な被験者数を獲得した上で、研究結果を解析して早期に学会発表、論文の作成へ進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後はリハビリテーション治療の視点に立ち、訓練方法の違いが筋活動にどのように影響を与えているかを観察する。 まずは健常者の前腕に対して日頃行われている訓練内容(手関節の自動運動訓練、他動運動訓練)をおこなって、MR像でそれぞれの訓練の際の活動筋に差があるかを検討し、訓練内容の効果、筋への影響について考察する。次に今度は脳血管障害者を対象として、同様な方法を用いて活動筋様子をMRの画像により評価する。その後、脳血管障害者の痙縮に対して行われるボトックスの施注に対して、その効果を筋の活動の面からスポットを当てる。このボトックスの施注は痙縮によって活動が制限されている筋に対して筋弛緩作用のあるボトックスを注入することにより、関節の動きを改善させる。一般的には他動運動を容易にして、日常生活動作に寄与することをその目的とする治療法だが、痙縮によって妨げられていた自動運動を改善させる効果もある。しかし施注した筋(主動筋)の筋活動並びに共同筋、拮抗筋に対する効果は明確でないので、MR像によってボトックスによる筋弛緩効果を評価する。なお訓練負荷量の定量として筋力測定が必要であるが、上肢の筋力測定については握力計のほか上肢用の筋力測定器の購入を予定している。 コロナ禍の影響により、どの程度被験者を集められるかが重要な課題となるが、対象が健常者であれば、十分に可能と考えている。ただし対象者である脳血管障害者のうちボトックス施注者を被験者として十分集められるかについては、今後のコロナ禍の動向を見ながら進めることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍で、研究の推進がうまくいかなかった。学会等もほとんどなく、学会発表はWEBでおこなった。2022年度は筋力測定器、学会発表関連旅費などに使用する予定である。
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