研究課題/領域番号 |
21K11250
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
永井 多賀子 日本大学, 医学部, 助教 (30837802)
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研究分担者 |
上井 浩 日本大学, 医学部, 准教授 (50451373)
中西 一義 日本大学, 医学部, 教授 (60403557)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リハビリテーションシステム / 摂食嚥下機能障害 / ICT / ディープラーニング |
研究実績の概要 |
ICT活用による摂食嚥下リハビリテーション確立のため、1)介護保険制度による摂食嚥下リハビリテーション診療体制調査、2)誤嚥性肺炎患者における栄養状態と再入院の関連性の検証を行った。 介護保険制度による摂食嚥下リハビリテーション診療体制調査では、介護保険施設のうち35.2%で摂食嚥下リハビリテーションを実施していた。人員不足等により、在宅生活における摂食嚥下リハビリテーションのニーズに十分対応しきれていないことが示唆された。また、ICT導入率は5.4%であった。今後介護保険制度によるICT活用を推進することにより、人員不足の問題の解消や実施率の向上に寄与できることが期待された。 次に、予備実験として誤嚥性肺炎患者における栄養状態と再入院の関連性について後方視的検証を行った。誤嚥性肺炎で当院に入院した患者のうち39.8%が再入院となっていることが明らかとなった。単変量解析の結果、再入院群では有意に入院から食事開始までの期間が長い結果が得られた(p=0.047)。また、再入院有無を従属変数としたロジスティック回帰分析では、再入院の影響因子として、年齢(オッズ比:1.055,95%CI:1.001-1.112)、呼吸器疾患既往の有無(オッズ比:2.815、95%CI:1.001-1.112)が影響因子として抽出された。本調査結果から、誤嚥性肺炎患者において、早期に包括的介入による食事開始までの期間の短縮に向けた支援の必要性が明らかになった。実態調査の結果をもとに、嚥下機能評価と適正な食事形態の選定および間接嚥下訓練強化により、早期食事開始を可能とするリハビリ支援プログラムのアルゴリズムを作成した。さらに、アルゴリズムに基づきディープラーニング分析を導入したソフトウェア開発に必要なシステムの構築に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究計画である摂食嚥下訓練に関する実態調査および、予備実験である誤嚥性肺炎における再入院の影響因子の検証について検証を行い、自宅退院後の摂食嚥下障害患者のリハビリテーション実施状況と、再入院の影響因子が明らかとなった。また本研究結果から、シームレスな摂食嚥下リハビリテーションシステムを構築する上での課題点が明確となった。開発システムは評価・リハビリ・食事形態選定から構成され、評価に関しては嚥下機能・サルコペニア・誤嚥性肺炎重症度の評価を可能とした。評価に基づいたリハビリテーションと食事形態選定のアルゴニズムを作成し、現在(株)コロンブスと共同でソフトウェア開発および環境構築に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
計画に沿って推進する見込みである。 令和4年度では摂食嚥下リハビリテーションシステムの検証試験及び包括的評価を行う。栄養管理を必要とする摂食嚥下障害患者50名を対象に前向き介入研究を行う。摂食嚥下リハビリテーションシステムプログラムはアルゴリズムを基に作成されたソフトウェアを使用し検証試験行う。さらに検証試験をもとに、システム効果・安全性の検証を試みる。試行版プログラムのブラッシュアップ作業を繰り返し、モデルプログラムの完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の研究経費の内訳事項として、ソフトウェア開発に必要であるシステム構築費、システム各種テスト費が含まれていた。これらの費用はソフトウェアが完成する令和4年度に一括請求となるため、残額を令和4年度に繰り越しとした。
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