研究課題
滑膜肉腫は全軟部肉腫のおよそ10%を占める悪性腫瘍で、治療としては腫瘍と共に一部の健常組織を切除する患肢温存手術が多くなっている。術後は、患者の日常生活活動(ADL)や生活の質(QOL)の向上に加え、社会復帰を目標としたリハビリテーションが増えてきている。リハビリテーションの効果に影響を与える術後の患肢機能回復は、術前の抗がん剤による腫瘍縮小効果に大きく依存するが、滑膜肉腫に対する効果的な抗がん剤は見出されていない。そこで、本研究では合成致死療法を応用して、滑膜肉腫に対する効果的な薬剤を探し出すことを目的とした。現在臨床で使用されている抗がん剤の中で、本研究では「DNA修復阻害剤」として働く薬剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、DNA結合作用剤など「DNA障害誘発剤」として働く薬剤を用いて解析を行った。その結果、一本鎖DNAあるいは二本鎖DNAの切断効果を示す薬剤は滑膜肉腫細胞の増殖抑制を示すことが判明した。さらに、これら一本鎖DNAあるいは二本鎖DNAの切断効果を示す薬剤の併用効果を検証したところ、相加的な阻害効果は観察されたが、相乗的な阻害効果は観察されなかった。このことは、一本鎖DNAあるいは二本鎖DNAの切断による細胞障害を修復する共通のメカニズムが存在し、その経路の活性が滑膜肉腫細胞において低下していることが予想された。これまでの多くの研究では、一本鎖DNAと二本鎖DNAの切断後の修復経路は異なっているため、滑膜肉腫細胞ではどのようなメカニズムによって修復機構が働いているのか興味深い結果を得た。しかし、その修復機構の分子メカニズムを解明することはできなかった。
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Current Oncology
巻: 30 ページ: 9484~9500
10.3390/curroncol30110687