研究課題/領域番号 |
21K11260
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
李 佐知子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (80599316)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 痙縮 / 脊髄損傷 / Ia活動抑制 |
研究実績の概要 |
脊髄損傷後の難治性後遺症の一つに脊髄反射亢進を示し、不随意的筋活動をおこす痙縮がある。現在使用されている痙縮治療薬は、経口抗痙縮薬として脊髄運動神経細胞を抑制する薬剤が使用されているが、副反応があり効果は限られている。近年、神経筋接合部の 神経伝達物質の分泌を阻害するボツリヌス毒素の注射が推奨され一定の痙縮軽減効果を上げているが、反復使用により筋萎縮や、骨格筋機能の低下が生じるうる副反応が報告された。 本研究では、痙縮を抑制するために脊髄運動神経細胞ではなく、脊髄反射回路を構成する Ia 感覚神経細胞をターゲットとした新たなコンセプトに基づいた「筋紡錘内での Ia 線維感覚器 受容体への拮抗薬投与」による痙縮治療法を提案する。本研究では反射回路の抑制によって、1痙縮が軽減するか、および2脊髄損傷時の抑制性脊髄内介在神経細胞の機能低下の抑制、を確認することを目的とする。 本年は1及び2の一部を検討した 実験1の結果では、薬剤が該当する骨格筋に安定的に投与ができておらず、電気生理学的結果に大きなばらつきが生じた。現在薬剤の安定的投与を確認するために、インドシアニンブルーを浸透圧ポンプに入れ、近赤外線で骨格筋への薬剤拡散が行われているかを確認しているところである。一方実験2については、体内には薬剤が投与されていると考えられたため、薬剤投与期間終了後に脊髄伸張反射弓の回路の可塑的変化を確認した。Ia軸索はvGlut1で可視化し、alpha運動神経細胞をChATで可視化し、シナプス接続を解析したところ、脊髄損傷後でIaーalphaの接続が過剰に増加する報告がある中で、Ia活動抑制をした結果、Ia-alpha接続が正常化することを明らかにした。 今後は実験1の電気生理学的解析に加え、実験2の回路の詳細な解析を実施する予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験1については、薬剤の投与や動物実験のばらつきの問題においても当初から想定していた内容である。このため、実験計画でもおおよそ2~3年かけて実施を計画している。 実験2については、先駆けて一部の結果が確認できた。また使用計画を立てていた遺伝子組み換え動物も導入され繁殖できていることから、順調に進んでいる。これらのことから総合的に考えて、概ね順調に推進していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の研究を推進していく計画である。 実験1については、投薬の安定投与を確実にできるように実施する。インドシアニンブルーで該当骨格筋に十分に浸透していることを確認する必要がある考える。この計画については、実験計画には含まれていなかったが、投薬が確認できないことでは電気生理学的な実験結果の解釈が不十分になることから、上記の実験を追加した。現在、インドシアニンブルーによる近赤外線カメラの映像を取得できており、マウス手指の骨格筋に浸透圧ポンプから投薬された際の浸透範囲を確認したい。そのご、DHPG及びVehicleによる薬剤投与実験を進めたいと思う。 実験1の確認ができた段階で、遺伝子組み換え動物を用いた投薬実験を並行して実施予定を計画している。脊髄抑制性回路の解析において免疫組織化学染色が必要であるので、その確認を進めていく予定である。
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