研究実績の概要 |
我々は、緊張した踵腓靱帯(CFL)が長・短腓骨筋腱を外側方向にリフトアップする現象を見出し、CFLが腓骨筋の収縮を補助するテンショナーとして機能する可能性を示した(Yoshizuka and Kuraoka, 2022)。本研究では、長・短腓骨筋腱の深側面(CFLとの接触面)に感圧センサーを設置し、肢位の変化に伴う接触圧の変動を可視化することで CFLの緊張が生じる足関節の肢位を特定し、テンショナー機能を機能解剖学的に解明することを目的としている。 研究遂行上のネックは、感圧測定センサの設置方法、計測値の単位表現、標本計測の肢位設定など多岐にわたったが、令和3年度および4年度の2年間にわたる検討の末、適切な計測条件を確立し得た。さらに、肢位の精密モニタリングに慣性センサを応用することを着想し、最終的に解剖体6体11肢を対象として計測ならびに統計学的解析を行った。 その結果、内がえし 0、5、10、15度における感圧センサからの平均出力値(mV)は、各々3.1 ± 9.3、340.9 ± 437.8、1178.6 ± 682.0、2063.0 ± 577.7 で有意差が認められ、内がえし0度と5度の間を除くすべての平均値間で有意な増加が認められた。また、検者内信頼性を示すICC(1, 1)は0.90であり、高い再現性が示された。 計測された出力値はCFLと腓骨筋腱の間の接触圧に相当することから、上記の結果は内がえし角度の増加に伴ってCFLが長・短腓骨筋腱をより強くリフトアップすることを強く示唆し、リハビリテーション医学における腓骨筋のトレーニング理論、捻挫後に腓骨筋の反応時間が遅延するメカニズムの解明、あるいは慢性足関節不安定症の病態理解に貢献し得る有用な基礎データと考えられる。本研究成果は国内外の学会で発表を行っており、現在、英文原著論文として投稿準備中である。
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