研究実績の概要 |
呼吸リハビリテーションは、呼吸筋や四肢体幹に対する運動療法などにより、運動能力の向上、呼吸困難および生命予後の改善が得られることが明らかである。しかしながら多くの介入手法において、介入内容を最適にすることに困難さがある。これは、現状の運動療法研究が生体計測結果に基づくものが多いことが一因として考えられる。本研究では生体における研究の課題を飛躍的に解決できる可能性があるコンピュータシミュレーション技術を活用して、呼吸リハビリテーションに使用する呼吸器モデルを構築することを目的としている。 当該年度は健常成人における呼吸器3Dジオメトリ作成と胸郭構造の多様性解明を実施した。ジオメトリ作成においては健常成人17名の胸腹部CT撮影を行い、吸気および呼気の肺気量位におけるDICOMデータを取得した。得られたデータはスパイロメーターと同時に取得したため、肺気量位変化値が明らかなものである。これらの胸郭構造を3Dジオメトリとして作成した。また将来的に多様な対象者の胸郭構造をジオメトリへ合理的に適合させる上で、左右構造の差異を多面的に解明する必要があるが、肋骨毎における角度と構造の左右差の詳細を解析した。左右の比較では、前額面肋骨角度は第5~9肋骨と第12肋骨、矢状面肋骨角度は第8肋骨のみ、肋骨端距離では第4,6,7肋骨、において左側が有意に大きかった(p< 0.05)。肋骨長は全ての肋骨で有意差な左右差はみられなかった。これらの知見は、呼吸動態のシミュレーションに用いる、構造モデル構築をするための基盤となるほか、呼吸リハビリテーションにおいて左右差を意識した評価や介入を行う重要性を再認識させるものである。
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