運動時に筋肉へ電気信号を伝える末梢神経にのみ存在するシュミット・ランターマン切痕(以下、切痕)を主体にミエリンの顕微鏡で認める構造変化と実際の運動障害の関連性を明らかにするために、本研究開始時には切痕の構成蛋白の欠損による運動障害への検討と切痕への動的影響に関する検討を行う予定であったが、研究進行過程で解析中の蛋白が末梢神経系のみならず中枢神経系にも認められたために、最終年度では前年度に引き続き、中枢神経系での検討を追加して実施した。 切痕に局在し運動障害を引き起こす可能性を示唆していたCADM4-4.1G-MPP6-Lin7蛋白複合体のうち、MPP6が分類されるMPPファミリーがLin7などの足場蛋白の局在に重要であることが示唆されたため、同ファミリーのMPP7についてもMPP7欠損マウスを作製して解析を実施した。MPP7欠損マウスの作成に成功し、中枢神経系や消化器・泌尿器などの多臓器での発現も認められたが、MPP7に対する特異的な抗体の入手が困難となり、研究を中止せざるを得ない状況となった。 一方、当初予定していた末梢神経系での切痕への動的影響に関する検討としては、予定通り4.1G欠損マウスにおいて、生体内凍結技法により末梢神経の弛緩時と伸展時の解析を進めている状況であり間もなく全解析を終了する予定である。さらに、切痕に局在する複合蛋白に関わりそうな別の蛋白についてはRNA-seqを用いたスクリーニング的な検討により候補蛋白を同定し、切痕で発現するものを現在は限定中である。 研究機関全体を通じて実施した研究により、運動に関する末梢神経にのみ存在する切痕の構成複合蛋白は末梢神経のみならず、運動に関する中枢神経系のシナプスでも同様に蛋白複合体を形成していることを明らかにできた。
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