• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

最適な変動的非対称性運動を用いた股関節疾患患者の跛行改善トレーニングの試み

研究課題

研究課題/領域番号 21K11291
研究機関山形県立保健医療大学

研究代表者

加藤 浩  山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90368712)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード自然歩行 / 変形性股関節症 / 非対称性運動 / ASI
研究実績の概要

本年度はデータの追加収集(健康高齢女性10名)を行い股関節疾患患者と比較検討した.
【対象】 65歳以上の健康な女性高齢者10名(対照群),及び左変形性股関節症の診断を受け,手術治療目的で入院した60~70歳代の女性10名(OA群)の計20名とした.計測課題は10m直線歩行路の自然歩行とした.計測にはモーションセンサーを5個使用し,センサー貼付位置は胸椎部(T7),腰椎部(L3),仙椎部(S2),左・右上腕外側上顆部とした.samplingは200 Hzとした.計測パラメータは3軸加速度・角速度の情報を使ってQuaternionを算出し,脊柱回旋角度と左・右腕振り角度を推定した.統計解析は対照群とOA群の各パラメータの平均値の差を検定した.また,両群内の腕振り角度とT7,L3,S2の回旋角度との関連性の検討にはPearsonの積率相関係数を算出し有意性を検定した.
【結果】 脊椎回旋角度はS2でOA群が対照群と比較し有意に低値を示した.腕振り角度はOA群が対照群と比較し左右共に有意に低値を示した.次に両群内でS2の回旋角度と腕振り角度の関連性を検討した結果OA群でのみ有意な正の相関を認めた.
【考察】 OA群は対照群と比較し左・右腕振り角度の有意な減少を認めた.腕振り動作に関する先行研究では能動的に生じるものか,体幹の回旋運動に伴い他動的に生じるものか議論がされているが一定の見解は得られていない.本年度の研究では,S2の回旋角度でのみOA群が対照群と比較し有意に低値を示した.腕振りが他動的に生じると仮定すれば,T7,L3の回旋角度は両群間で有意差を認めなかったことから,腕振り角度の大きさへの関与は低いと考えられる.次にS2と腕振り角度の関連性を検討した所,OA群でのみ有意な正の相関を認めた.以上からOA群の腕振り角度の減少はS2の回旋角度の減少が影響している可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度はモーションセンサーを用いてQuaternion(四元数)を算出し,脊椎と四肢の歩行時姿勢情報を推定することを試みた.同時に予備実験として三次元動作解析装置を用いて角度情報の精度について検討した.その結果,角度情報の精度は,運動速度に影響を受ける可能性が出てきた.体幹の回旋角度に関しては運動速度が比較的遅いため,ある程度の精度は確認出来たが,上肢,下肢の振り出し速度に関しては,誤差が大きくなる可能性があり検討課題となった.そこで,本年度は,高速回転が可能なDCギアボックスモーター(100RPM)を使用し精度の検証を行った.その結果,高速回転運動におけるモーションセンサーから得られる推定角度情報は低速回転と同様に高い信頼性と妥当性を示した.以上から,当該モーションセンサーを使用した自然歩行時における上肢,下肢の角度情報の精度は高いことが確認できた.
次に非対称性指数(ASI)の指標に関しては,加速度,角速度,角度情報,歩幅などある.特に歩幅に関しては,市販ソフトを用いて予備実験を行っているが,三次元動作解析装置での計測値との差が大きく改善する必要性がある.現在,民間企業の協力を得て当該ソフトの改善を進めている.現時点では,概ね計画の大きな遅れはない.

今後の研究の推進方策

本年度はsplit-belt treadmill(SBT)を用いた非対称性歩行の予備研究を本学で実施する予定である.また,新型コロナウイルス感染症の感染状況をみながら,医療施設の協力が得られれば,変形性股関節症患者(平均年齢60歳,全例女性)10名程度の計測を行う.股関節疾患患者は,健常高齢者の計測で算出した最適な変動的非対称性指数を用いたSBT上での歩行練習を5分実施し,前後で歩容の変化を評価し,非対称性トレーニングの有効性を検討する.その後,これまでに蓄積されたデータを整理,分析し学会等で発表する.また,当該年度は論文作成に重点を置きリハビリテーション,または,理学療法や動作分析を専門とする国際誌へ投稿する.

次年度使用額が生じた理由

コロナウイルス感染拡大の影響で,旅費,人件費,その他費用が余剰となった.余剰分は,次年度の研究で使用するパソコン等の購入費補助に使用する

備考

【加藤研究室ホームページ】 http://plaza.umin.ac.jp/~hkato/index.html
【reserchmap】 https://researchmap.jp/hkato_sopt

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 4件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] シングルケーススタディで臨床思考能力を磨く2023

    • 著者名/発表者名
      加藤浩
    • 雑誌名

      山形理学療法学

      巻: 19 ページ: 1-3

  • [雑誌論文] Combined neuromuscular electrical stimulation and transcutaneous spinal direct current stimulation increases motor cortical plasticity in healthy humans2023

    • 著者名/発表者名
      Koseki Tadaki,Kudo Daisuke,Yoshida Kaito,Nito Mitsuhiro,Takano Keita,Jin Masafumi,Tanabe Shigeo,Sato Toshiaki,Katoh Hiroshi,Yamaguchi Tomofumi
    • 雑誌名

      Frontiers in Neuroscience

      巻: 16 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fnins.2022.1034451

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 健常高齢女性の歩行時における腕振り角度,および腕振り非対称性と脊柱回旋との関連2022

    • 著者名/発表者名
      加藤浩,石川仁,南澤忠儀,藤田努,岡澤和哉,奈須勇樹
    • 雑誌名

      運動器理学療法学

      巻: 2 ページ: 41~46

    • DOI

      10.57281/jofmpt.202202

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 原著 歩行動作の時間的・空間的パラメータと膝関節の力学的負荷,加速度関連指標との相互関係2022

    • 著者名/発表者名
      松田 友秋,新保 千尋,加藤 浩
    • 雑誌名

      理学療法ジャーナル

      巻: 56 ページ: 1357~1364

    • DOI

      10.11477/mf.1551202863

    • 査読あり
  • [学会発表] 筋骨格モデルシミュレーションを用いた動作の解析2022

    • 著者名/発表者名
      加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] シングルケーススタディで臨床思考能力を磨く2022

    • 著者名/発表者名
      加藤浩
    • 学会等名
      第30回山形県理学療法学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 臨床理学療法士に求められる研究と科学2022

    • 著者名/発表者名
      加藤浩
    • 学会等名
      第73回北海道理学療法士学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 股関節症の運動療法に必要な知見2022

    • 著者名/発表者名
      加藤浩
    • 学会等名
      第49回日本股関節学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 脊柱後弯姿勢が歩行時立脚後期の下肢関節モーメントパワーに与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      新保千尋,中畑敏秀,永濱良太,福田秀文,加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 二次元動作解析ソフト「Kinovea」を用いた歩行時膝関節角度の解析精度―三次元動作解析装置との比較検討―2022

    • 著者名/発表者名
      奈須勇樹,加藤浩,藤田努,岡澤和哉,原田哲誠,川口謙一,中島康晴
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 9 軸モーションセンサーのQuaternion から推定した角度情報の精度―三次元動作解析装置との比較検討―2022

    • 著者名/発表者名
      森川大貴,加藤浩,石田和宏,宮城島一史,安倍雄一郎,柳橋寧,百町貴彦
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 立位体幹伸展動作における膝関節屈曲運動の有無が腰椎骨盤リズムへ与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      多々良大輔,中元寺聡,堤麻梨子,原田伸哉,園田康男,石谷栄一,加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 変形性膝関節症患者における外部膝関節内反モーメントと膝関節周囲筋の同時収縮との関係2022

    • 著者名/発表者名
      岡澤和哉,加藤浩,藤田努,奈須勇樹,濱井敏,川口謙一,中島康晴
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 下肢力学的エネルギーの流れからみた膝関節伸展制限が歩行立脚期の膝関節に及ぼす影響について2022

    • 著者名/発表者名
      園田昌義,加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 歩行動作の時間的・空間的パラメータが外部膝関節内反モーメント力積に及ぼす影響―重回帰分析での検討―2022

    • 著者名/発表者名
      松田友秋,加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] 変形性股関節症患者における人工股関節全置換術前後の歩行時中殿筋表面筋電図周波数特性2022

    • 著者名/発表者名
      野口裕貴,茅野孝之,鈴木裕也,加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [学会発表] モーションセンサを用いた起立・着座動作における規則性・調和性評価の試み2022

    • 著者名/発表者名
      嶋村剛史,森川大貴,加藤浩
    • 学会等名
      第10回日本運動器理学療法学術大会
  • [図書] 図解理学療法検査・測定ガイド 第3版2023

    • 著者名/発表者名
      内山靖(編)
    • 総ページ数
      1052
    • 出版者
      文光堂
    • ISBN
      978-4-8306-4704-8
  • [図書] 理学療法評価学 第4版2023

    • 著者名/発表者名
      奈良勲,内山靖,岩井信彦,横田一彦,森明子,鈴木里砂(編集)
    • 総ページ数
      448
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4-260-04969-6
  • [図書] こだわり抜く筋力増強運動2023

    • 著者名/発表者名
      斉藤秀之,加藤浩,阿南雅也(編)
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      文光堂
    • ISBN
      978-4-8306-4705-5
  • [図書] こだわり抜くバランス練習2022

    • 著者名/発表者名
      斉藤秀之,加藤浩,望月久(編)
    • 総ページ数
      280
    • 出版者
      文光堂
    • ISBN
      978-4-8306-4599-0

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi