がんリハビリテーションの回復過程に影響を及ぼす関連要因を、前向きコホート研究によって検証した研究はなく、早期の社会復帰を見据えた、三次予防に関連する生活要因を探索することが求められている。 R5年度までの実績として、がんリハビリテーションを実施した対象者を把握するために、診療報酬明細情報(レセプト情報)を用いて判定したがん罹患の有無について妥当性を検証した論文を公開した。レセプトの病名と治療行為で判定した方法の妥当性(感度・特異度・陽性的中度)は高く、それぞれ、全がん(87.0%・99.4%・74.5%)、胃がん(88.8%・99.9%・70.5%)、大腸がん(80.6%・99.9%・72.0%)、肺がん(86.3%・99.9%・73.3%)、乳がん(100%・99.9%・68.4%)、前立腺がん(91.9%・99.9%・89.2%)だった。さらに、対象者を成人(40-64歳)と高齢者(65-74歳)に分けた層別解析において、レセプトの病名と治療行為で判定した方法の妥当性(感度・特異度・陽性的中度)は、全がんでは、成人で(84.8%・99.6%・71.3%)、高齢者では(87.9%・99.2%・75.7%)であった。このことから、レセプト情報の病名と治療行為を組み合わせて判定した罹患把握は、がん罹患の判定方法として利用可能であり、高齢者ではその精度がやや高い可能性があることが示唆された。 今年度は、商用に提供されているDPCデータを用いて、一度でもがんリハビリテーションを実施した患者、約2万人を対象に、がんリハビリテーションを施行した患者の入院時ADLと転帰先との関連を明らかにすることを目的に分析を実施した。結果として、入院時に歩行やトイレ動作が自立していないことは、自宅に退院した者と比較して、転院、施設入所、死亡の転帰を迎える確率が高いことが明らかとなった。
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