研究課題/領域番号 |
21K11308
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
橋本 泰成 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80610253)
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研究分担者 |
大田 哲生 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20233132)
加藤 健治 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 健康長寿支援ロボットセンター, 室長 (30771216)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳波 / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
脳卒中後のリハビリに革新をもたらす技術としてブレイン・マシン・インタフェース(BMI: Brain-Machine Interface)技術が注目されている。BMI を使えば、運動指令に呼応して電気刺激装置が他動的に筋を収縮させ、「脳から筋肉、筋肉から脳への経路」を再生し神経の回復を促進することができる。BMIを使ったリハビリは、動物研究や症例報告などにより安全性が確立されつつあるが、まだ実用化には至っていない。申請者らは、これまでにベットサイドでも利用できるBMIリハビリ装置を開発し、少人数での臨床応用に成功している。本研究課題では、実用化への壁となっている課題:①左右の足運動脳波識別、②訓練効果の定量化、について解決することを目指している。本研究により今後のBMIリハビリの実用化に向けた取り組みが一層促進され、脳卒中患者らの将来的な利益増大に大きく貢献できる。 本研究課題初年度である本年度(令和3年度)では、本格的な測定に向けて、まず多種の運動企図について検討し、現在よりも高い精度で識別できる運動イメージ種を明らかにすることを目指した。3名の健常若年者においてイメージする筋収縮の強さや時間、意識する筋群を従来よりも細かく変化させ、脳波変化の一種であるベータリバウンドおよび運動関連脳波の変化を測定した。その結果、足関節運動の中でも底屈運動(かかとを上げるような運動)でベータリバウンド強度が最も高くなる結果が得られた。特に、0.5秒程度で急激に収縮させて脱力させるバリスティック運動でベータリバウンドがより強く発生することが示唆された。また別途、健常者1名で経頭蓋交流電気刺激前後でのベータリバウンド測定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書記載の研究計画では、令和3年度~4年度では、運動イメージによるベータリバウンド発生の最適な条件を健常若年者、健常高齢者において明らかにすることを目的としていた。ベータリバウンドは、近年発見された運動や運動企図にともなって変化する脳波の一種で足の運動により発生しやすいと言われているが、皮質におけるベータリバウンドの強度パターンは左右の足の運動で似通ってしまい、自動識別が難しい。一方で、これまでの申請者らの研究結果では、運動企図の持続時間や強度および脳波導出法の工夫により左右差を強調でき、識別しやすくなることを突き止めている。 現在までに、実験系の確立および健常若年者3名での測定ができているので、ある程度順調に研究は推移していると言える。一方で、研究代表者の異動などもあり、測定したデータの詳細な分析、特に脳波パターンの左右差の定量化や脳波識別率の算出などができていない。これらの点については令和4年度後半までに完了できるように取り組んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの検討により、本実験における運動イメージ種をある程度絞り込むことができた。完全に実験プロトコルを決定するためには現在持っているデータをより詳細に分析することと、昨年度追加した健常者1名における経頭蓋交流電気刺激前後でのベータリバウンドのデータを分析する必要がある。本年度はこの分析に最初に取り組む。 次に、研究代表者の所属が異動になったことに伴い、人を対象とした研究倫理に関する書類を作成して、新たに倫理申請を実施する。申請が許可された段階で、若年者を中心とした15名程度の被験者を募り、運動イメージ中の脳波測定を実施する。また、脳卒中を発症する患者は平均70歳代であるので、患者での測定との比較対象群として同年代の健常者20名を比較対象に定め、ベータリバウンドを測定・分析する。 また、最終年度である令和5年度では、BMI訓練後の歩行評価を予定している。その準備のため、協力先の国立長寿医療研究センターに設置された歩行用仮想現実(VR)システム(GRAIL: Gait Real-time Analysis Interactive Lab)の見学や施設の確認も実施する。最終年度で得られた成果については学術雑誌、国際学会などでの発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していていた測定機器が予期せず販売終了となり、後継の測定器を選定するのに時間がかかっているため、また学会や打合せで複数回出張する予定であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響により、学会の中止やオンライン化など出張自体の取りやめが相次いだため、次年度使用額が生じた。
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