研究課題/領域番号 |
21K11312
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
四本 かやの 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (10294232)
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研究分担者 |
橋本 健志 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (60294229)
胡 友恵 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (20882971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 作業療法 / 社会参加 / 心理社会療法 / 精神科外来 / 生活機能分類 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、社会参加不適応による精神科受療者の中で,復学・復職等には至らず、休学・休職を継続する外来通院患者を対象として、彼らの社会不適応状態を国際生活機能分類(ICF)によって類型化し、社会参加を改善するリハビリテーション手法を開発することである。 令和3年度は、準備期間中に集積した事例についての情報整理や討議と、研究分担者・研究協力者の外来診療患者のうち、本研究の組み入れ適格基準を満たす新たな対象者のリクルートを実施した。第55回日本作業療法学会(令和3年9月WEB:ライブ&オンデマンド開催)において、「過敏性腸症候群を合併した復職困難事例に対する作業療法」を研究分担者・研究協力者と共に口述発表した。 具体的には、集積した事例の情報整理・収集については、研究分担者や大学院生らとICFの類型化を試みた。神戸大学附属図書館の検索端末を使用し、医中誌Web・PsycINFO・PubMed等のデータベースを検索し、情報収集を実施した。社会的不適応の中でも、身の回りのことは自立している引きこもり状態にある事例については、診療所外来および地域活動支援センターなど福祉領域における取組の事例報告は散見されるものの、その効果的支援策は未だ確立していない。 新たな研究参加者リクルートについては、新型コロナ感染症による外来患者受診控えにより、研究参加事例の確保が難しくなっている。さらに新型コロナ感染症の感染拡大予防措置による就労・就学形態の変化や退職・退学・解雇などにより、それぞれの社会参加形態が変化し、自殺者の増加などメンタルヘルス上の問題が推測される。単に休学・休職中の症例のみならず、精神神経科診療所等の受診の必要な者に対する早期のリハビリテーション手法の確立が重要であり、このような新たな対象の出現からも本研究における社会参加の改善のためのリハビリテーション手法の開発の意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は、共同研究者・研究協力者との打ち合わせ、研究参加者の募集・選定の方法についての会議の実施、さらにこれまで集積している事例の分析を実施し、一部類型化の試案を作成した。 研究参加者の募集・選定に向け、研究分担者および研究協力者と打ち合わせ会議を持った。すなわち、参入基準を満たす診療所の患者を選定するため、研究分担者である精神科医らと対象者選定の条件を確認し、可能である場合には対象者への依頼を開始した。しかし新型コロナ感染症の感染拡大防止措置などの影響により、本研究の適格条件を満たす対象者の受診自体やその頻度が低く、研究参加の説明などの機会を得るまでに時間を要している。 これまでに集積してきた事例については、評価結果を討議し、既に介入に入っている。これらの事例を検討し、令和3年9月に開催された第55日本作業療法学会で口述発表を行い、支援者である作業療法士らと意見交換を行った。さらに令和3年11月に開催された第26回日本デイケア学会ではシンポジウムを企画、司会を行い、意見交換や情報収集を行った。特に診療所や総合病院等で勤務する専門職、研究職との情報交換により実際には症状が安定しても就労できない外来受診患者が多数存在していることを確認できた。さらに研究計画時には想定していなかった、新型コロナ感染症による物理的な社会参加形態の変化に伴う精神的不調者が、本研究の組み入れ条件に該当することが分かり、検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症による受診控えなどのため、研究参加者のリクルートが遅れている。引き続き定期的に研究代表者が個別介入を実施している施設に関連する診療所勤務の精神科医らと定期的に研究打ち合わせ会合をもち、対象者数の増加に向けリクルートを継続する。さらに対象者数の不足に対しては、神戸大学病院精神科受診者、その他精神科診療所受診者などの候補をもつ精神科医を研究分担者から紹介を受ける予定である。 また出勤を伴う場合は復職に至らなかった事例がリモートワークを利用することによって復職する、他方、出勤が減少したために抑うつ症状の再燃が認められ再度休職に至るなど、環境因子の変化を大きな誘因とした社会参加形態の変更が認められる。これは本研究で対象となる社会参加不適応者のICFによる類型化に影響すると考えられ、早急に検討が必要である。新型コロナ感染症の流行のみならず、コロナ禍における就労の形態変化についても考慮し、類型化の検討を進める。 さらに個人因子を理解する際に重要な知能検査であるWAIS-ⅢからWAIS-Ⅳに臨床での使用変更が進んできている。このことにより事例の類型化を行う際に、信頼性を担保してデータを共通に使用するため、究協力者の臨床心理士らから講義を受け、研究協力者・大学院生ともに理解をすすめる。 新型コロナ感染症による社会参加形態の変化は、徐々に明らかになっている。学会・関連の専門雑誌などの情報収集を行い、研究対象として組み入れる場合の視点を研究分担者・研究協力者らとさらに整理していくため会議を定期的に開催し、進捗を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の使用予定金額のうち、次年度使用が生じた理由として、物品費については参加者のリクルート数が予定数を下回ったことが原因である。旅費については、新型コロナ感染症のヨーロッパでのパンデミックにより、国際学会(於パリ・フランス)の開催が延期されたことが主な原因である。人件費・謝金等については、予定していた専門知識を持つ研究協力可能な者の雇用について調整がつかなかったためである。 上記の次年度使用分は、それぞれ研究参加者の更なる確保、学会が8月に開催予定であることにより、物品費・旅費等の使用が計画されている。人件費については、既に求人中であり、またリクルートが進むにしたがって謝金の必要性も増加するため使用が予定されれている。
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